2026 年 68 巻 6 号 p. 1203-1252
日本消化器内視鏡学会は,「Minds 診療ガイドライン作成マニュアル 2020 ver. 3.0」に従い,evidence-based medicine(EBM)に基づいた「被包化膵壊死(WON)に対する内視鏡診療ガイドライン」を作成した.WONは,壊死性膵炎後に液状化した壊死組織が被包化され囊胞性病変を形成した重篤な局所合併症であるが,近年では経消化管的治療により良好な治療成績が得られている.執筆はCQ(clinical question)形式とし,必要に応じてBQ(background question)・FRQ(future research question)を設けた.なお,一部のCQにおいては,レベルの高いエビデンスが少ないため,専門家のコンセンサスを重視せざるを得なかった.本ガイドラインは,疫学,診断,治療の 3項目を柱に構築し,現時点での指針とした.
膵の被包化壊死(walled-off necrosis:WON)は,壊死性膵炎後に壊死組織が被包化され囊胞性病変を形成した重篤な局所合併症である.近年,こうしたWONに対する超音波内視鏡(endoscopic ultrasound:EUS)下ドレナージおよび内視鏡的ネクロセクトミーによる経消化管的インターベンション治療が開発され,良好な治療成績が得られているが,手技に伴う重篤な偶発症も経験されるため,内視鏡治療に固執することなく経皮的アプローチや外科手術も考慮した広い視野での治療戦略が必要である.なお,本ガイドラインでのインターベンション治療とは,経消化管的あるいは経皮的,場合によっては外科的治療までを含む介入治療を指している.こうした現在の状況を鑑みて,日本消化器内視鏡学会ガイドライン委員会は,WONに対する内視鏡診療ガイドラインを,科学的な手法に基づいた基本的な指針となるものとして新たに作成することを決定した.作成方法は,近年行われている国際的に標準とされているEBMの手順に則って行った.具体的には「Minds診療ガイドライン作成マニュアル2020 ver. 3.0」 1)に従い,EBMに基づいたガイドライン作成を心がけた(Table 1).執筆の形式はCQ(clinical question)形式とした.本ガイドラインがWONに対する内視鏡診療における有用な指針となることを期待する.なお,本ガイドラインの内容は,一般論として臨床現場の意思決定を支援するものであり,医療訴訟等の資料となるものではない.

推奨の強さとエビデンスレベル.
ガイドライン作成委員として消化器内視鏡医15名が作成を委嘱された.ガイドライン作成委員とともにシステマティックレビュー協力委員12名がシステマティックレビューを行った.評価委員として消化器内視鏡医5名が評価を担当した(Table 2).

被包化膵壊死(WON)に対する内視鏡診療ガイドライン作成委員会構成メンバー.
各委員より提出された98のクエスチョン案から重複等を除いた55案に絞り込み,事前に作成委員に採否のアンケートを取った後,委員会にてCQの採択について討議を行い,最終的に委員長の判断により採択を行った.「疫学」「診断」「治療」の3項目に分類し,全体でCQ 20,BQ 7,FRQ 1の28のクエスチョンを採択し,コラム1項の掲載を決定した.必要な論文を網羅するため検索期間を設けず文献検索を行った.検索した文献を評価し必要な文献を採用し,各クエスチョンに対するステートメントと解説文を作成した.作成委員は各担当CQの各文献のエビデンスレベルおよびステートメントに対する推奨の強さとエビデンスレベルを「Minds診療ガイドライン作成マニュアル2020 ver. 3.0」 1)に従って設定した.作成されたステートメント案を全委員で検討し,最終的にCQ 17,BQ 7,FRQ 3の27のクエスチョンとした上で,CQのステートメント案に対して,作成委員15名によりDelphi法による投票を行った.Delphi法は,1-3:非合意,4-6:不満,7-9:合意,として7以上のもとをステートメントとして採用した.作成されたステートメントと解説文を用いてCQ形式のガイドラインを作成した.完成したガイドライン案は評価委員の評価を受けるとともに,外部評価の一環として学会会員に公開されてパブリックコメントを求めた上で,それぞれの結果に関する議論を経て修正を加え,本ガイドラインが完成した(Table 3).

クエスチョン,ステートメント,推奨・エビデンス一覧.
本ガイドラインの取り扱う対象患者は,内視鏡による検査・診断・治療を検討するWON患者とする.また,利用者はWONに対して内視鏡検査・診断・治療を施行する臨床医およびその指導医とする.ガイドラインはあくまでも標準的な指針であり,個々の患者の意志,年齢,偶発症,社会的状況,施設の事情などにより柔軟に対応する必要がある.
本ガイドライン作成に関与した各委員の利益相反に関して下記の内容で申告を求めた.
①本ガイドラインに関係し,委員個人として何らかの報酬を得た企業・団体について:①役員・顧問職の有無と報酬(100万円以上),②株式の保有と利益(100万円以上,あるいは5%以上の保有),③特許使用料(100万円以上),④講演料等(50万円以上),⑤原稿料(50万円以上),⑥研究費,助成金(100万円以上),⑦奨学(奨励)寄付など(100万円以上),⑧企業などが提供する寄附講座(100万円以上),⑨旅費,贈答品などの受領(5万円以上).
②申告者の配偶者,一親等内の親族,または収入・財産を共有する者が何らかの報酬を得た企業・団体について:①役員・顧問職の有無と報酬額(100万円以上),②株式の保有と利益(100万円以上,または5%以上の保有),③特許権使用料(100万円以上).
③申告者の所属する研究機関・部門の長にかかるinstitutional COI(申告者が所属研究機関・部門の長と過去に共同研究者,分担研究者の関係にあったか,あるいは現在ある場合)について:①研究費(1,000万円以上),②寄附金:(200万円以上),③株その他.
報酬金額は年度ごとに対象とし,直近3年度についての利益相反について申告を求めた.
作成に携わった委員の企業との経済的な関係につき,申告を得た企業名をTable 4に示す.

利益相反についての開示事項.
すべての申告事項に該当がない委員については,表末尾に記載した.
なお,ステートメント決定時の投票に際しては,本ガイドラインに関連する内容で,「個人的・組織的に経済的COIが基準額*を上回る場合」「経済的COI以外のCOI等(研究活動・キャリア・人間関係・利害競合等)が考えられる場合」の申告を求めたが,いずれも該当はなかった.
*:本学会COI指針第8条第7項により定められた診療ガイドライン策定参加者の議決権に関する基準額は以下のとおりである.講演料200万円,パンフレットなど執筆料200万円,受け入れ研究費2,000万円,奨学寄附金1,000万円.
本ガイドライン作成に関係した費用については,日本消化器内視鏡学会による資金提供を受けた.
BQ1:Walled-off necrosis(WON)とは何か?
ステートメント:炎症性被膜に囲まれた壊死性貯留であり,膵炎により生じた膵実質や膵周囲組織の壊死物質からなり,通常,壊死性膵炎発症4週以降に形成される.
解説:
急性膵炎に伴う局所合併症である膵膿瘍は致死的な疾患であって古くから外科的デブリードマンとドレナージの必要性が指摘されていた.膵膿瘍に関する論文が多数発表されたが,それらの論文における膵膿瘍の定義はいずれも異なっており,膵局所合併症の定義と分類が必要とされた 1).
1992年に急性膵炎の重症度や局所合併症に関するアトランタ分類が発表され,局所合併症は,acute fluid collection,acute pseudocyst,pancreatic abscess,pancreatic necrosisの4つに分類された 2).この分類は広く普及したが,特にpancreatic abscessとpancreatic necrosisとの鑑別が難しく,アトランタ分類の改訂が望まれるようになった 3),4).
それを受けて,改訂アトランタ分類では,膵周囲の貯留が液体のみなのか,壊死物質からなる固形物を含むのかという点を重視して,acute peripancreatic fluid collection(APFC),pancreatic pseudocyst(PPC),acute necrotic collection(ANC),WONの4つに分類された.すなわち,間質性浮腫性膵炎後に発生する液体の貯留を発症後4週以内のAPFCと4週以降のPPCに分類し,壊死性膵炎後に発生する壊死性の貯留を発症後4週以内のANCと4週以降のWONに分類している 5).
WONは,改訂アトランタ分類において,境界明瞭な炎症性被膜に囲まれた壊死性貯留であると定義されている.この貯留物は膵炎により生じた膵実質や膵周囲組織の壊死物質からなり,通常壊死性膵炎発症4週以降に形成される 5).
ESGE(European Society of Gastrointestinal Endoscopy)ガイドラインにおいてもWONは4週以降に形成される被包化された部分的に液状化した壊死物質を含む貯留と定義されている 6).しかし,4週という定義は目安であって,4週以内であっても画像上十分に被包化されていればWONとして扱ってよい可能性がある.
BQ2:WONの疫学は?
ステートメント:本邦の疫学調査では急性膵炎にWONを合併する割合は6.9%である.WON症例の58.2%でインターベンション治療が行われており,WON症例の致命率は6.7%と報告されている.
解説:
急性膵炎の5~20%に膵壊死を伴い 1)~3),4週間以上の時間経過を経て反応性隔壁に被包された壊死組織であるWONを形成する 4).2016年に行われた本邦における急性膵炎診療に関する全国疫学調査 5)では,WONの有無に関する診療情報が利用可能であった急性膵炎2,829症例のうちWONを合併した症例は195症例(6.9%)であった.さらに,WONに対する治療法が判明している184症例のうち,107症例(58.2%)では外科的・内視鏡的・経皮的に治療介入され,77症例(41.8%)で保存的に加療されていた.致命率はWON非合併例では1.3%であったが,WON合併例では6.7%と有意に高率であった.
2.診断BQ3:WONはどのように診断するか?
ステートメント:一般的に造影CTを用いて診断する.診断の際は形態・被包化・内部性状に着目し,急性膵炎発症からの時間も考慮する.
解説:
前述のようにWONは改訂アトランタ分類で定義されており,膵または膵周囲の壊死組織が炎症性の壁で被包化された状態をいう 1).
急性膵炎発症後,腹腔内炎症の程度,壊死や腹水の範囲,膵周囲貯留の発生や変化,仮性動脈瘤発生といった状況を精査する目的で繰り返し画像診断が行われることが一般的であり,多くの場合この機会に膵周囲貯留の存在診断が行われる.
WONの質的診断は,禁忌がない場合は造影CTで行われることが一般的である.WONの要件のうち炎症性の壁による被包化は,造影効果のある明瞭な構造として認識できることが多く,通常急性膵炎発症から4週以降に形成されるとされている 1).壁構造の成熟は突然に起こるものではなく形成途上の壁構造が明瞭に認識できない時期があり,こういった場合に,境界の明瞭さ,造影される構造の有無,時間経過に着目して被包化を推察する.
貯留物質が壊死組織であるか液体であるか(WONであるかPPCであるか)の診断は,CT値,MRI信号強度,エコー輝度などを参考に行う.CTでは,大きいサイズ,大動脈周囲のスペースへの進展,壁境界の不整,脂肪成分の存在,膵の変形や断裂などがWONを示唆する所見であることが報告されている 2).MRIでは,壊死物質や出血がCTより容易に判別できるため,WONとPPCの鑑別に有用であるとする報告もある 3).EUSは,空間解像度においてCTやMRIを凌駕し,病変内の固形成分を同定するモダリティとして高い診断能を有する 4),5).一方,EUSの問題点として,多発病変・巨大病変・上部消化管から離れた病変の全体像の把握は難しいこと,気体成分を混じる場合には診断精度が低下すること,一般に鎮静を要すること,熟練した超音波内視鏡医が必要であることが挙げられる.
通常,時間とともに被包化されることによってAPFCはPPCに,ANCはWONに移行するため,急性期の画像も参考になる.ANCでは,完全な壊死に陥っていない領域に造影効果がみられるため,貯留浸出液との鑑別が容易なことがある 3).急性期においてもMRIでは,T1強調像において嚢胞内の液体成分,T2強調像において出血や壊死が鑑別できるため,鑑別に有用である.
また,主膵管破綻症候群(disconnected pancreatic duct syndrome:DPDS)を伴っているか否かの正確な診断は治療方針決定に重要である.膵管断裂は造影CTで同定できることが多いが,診断が難しい症例においてはMR胆管膵管画像(Magnetic Resonance Cholangiopancreatography:MRCP)が有用である 4).造影CTやMRCPでは診断困難である場合や撮像の禁忌がある場合には,必要に応じて内視鏡的膵管造影を検討する.
実際の診療におけるWON診断のモダリティ選択は,急性膵炎の急性炎症治療において行われた画像検査を参照した上で,追加評価が必要かどうかを検討して行う.造影CTが標準的と考えられるが,直近の被曝放射線量,ヨード造影剤禁忌を鑑みた上,体内金属などのMRI検査禁忌,長時間のMRI検査や鎮静下内視鏡を許容する呼吸循環動態の安定度などを考慮してMRIやEUSの施行を考慮する.
CQ1:WONにおける感染の有無の診断にEUS-FNAは必要か?
ステートメント:感染性WONの診断におけるEUS-FNAの有用性は示されているが,ルーティンで行う必要はない.
修正Delphi法による評価:中央値9,最低値7,最高値9
推奨の強さ:2,エビデンスレベル:C
解説:
感染性WONの診断における超音波内視鏡下穿刺吸引法(EUS-FNA)の有用性については,Rauら 1)が前向きに検討しており,診断感度88%,特異度90%と高い診断成績が報告されている.また,彼らがまとめた過去の報告でも診断感度は88~98%,特異度も90~100%と極めて高い診断能であった.したがって,外科的ドレナージ等の侵襲の大きな処置が行われる際には,不要な侵襲を避けるためEUS-FNAが有用となる可能性がある.一方,van Baalら 2)の報告ではEUS-FNAによって採取した検体の培養陽性率は86%(24/28)であり,臨床徴候のみで診断した場合の診断感度80%(74/92),CTにおけるWON内のガス像を指標とした画像検査での診断感度94%(83/88)とほぼ同等であったとされる.
さらに内視鏡的ドレナージが広く一般的に行われている現在,既に被包化して感染徴候がある場合には診断的なEUS-FNAをスキップしてドレナージが行われることが多く,感染の診断にEUS-FNAが用いられることはほとんどなくなっている.本邦の急性膵炎診療ガイドライン2021 3),ESGEガイドライン 4)でもルーティンでEUS-FNAを施行することは勧められておらず,感染の有無が臨床徴候あるいは画像検査ではっきりしない場合においてのみ施行を検討するとされている.
3.治療CQ2:無症候性WONに予防的抗菌薬投与を行うべきか?
ステートメント:無症候性WONに予防的抗菌薬投与を行わないことを提案する.
修正Delphi法による評価:中央値9,最低値8,最高値9
推奨の強さ:2,エビデンスレベル:C
解説:
急性壊死性膵炎(acute necrotizing pancreatitis:ANP)では膵や膵周囲に急性壊死性貯留(ANC)を形成する.その後,通常4週間程度でANCは被包化され,WONとなる.発熱や腹痛などの症状を呈していない無症候WONに対して,感染を予防する目的で抗菌薬を投与(予防的抗菌薬投与)する必要があるのか,臨床上の課題である.しかし,現在のところ無症候性WONを直接対象とした臨床研究の報告はない.一方,WONと連続した病態であるANPに対する予防的抗菌薬投与の有効性を検証したランダム化比較試験(RCT)は複数存在する.そのため本ガイドライン委員会では,網羅的な文献検索により得られた文献を用いてRCTのメタ解析を行い,ANPに対する予防的抗菌薬投与の有用性を検証した.PubMedおよび医学中央雑誌において,創設から2024年1月10日までの期間に,① acute pancreatitis,② (acute necrotizing pancreatitis) or (WON) or (walled-off necrosis) or (WOPN) or (walled-off pancreatic necrosis) or (ANC) or (acute necrotic collection),③ (prophylactic antibiotic) or (antibiotic prophylaxis) or (early antibiotic treatment)の検索用語で文献検索を行った.検索式により得られた文献に,検索式外の検索による8つの文献を加え,計259文献についてスクリーニングを行った.RCTではない前向き研究,対象がANPに限定されていないRCTは除外した.スクリーニングの結果,7つのRCTを抽出した 1)~7).
7つのRCTのメタ解析の結果,膵壊死感染発生率[リスク比 0.74(95%CI:0.5~1.11), p=0.14],致命率[リスク比 0.78(95%CI:0.48~1.28), p=0.33],外科的インターベンション実施率[リスク比 0.93(95%CI:0.69~1.26), p=0.66]のすべてで予防的抗菌薬実施群と対照群の間に有意差がないことが示された(Figure 1,2,3).さらに,XueらのRCTでは,予防的抗菌薬実施群で真菌感染が有意に多かったことが報告されている 7).他の観察研究においても,予防的抗菌薬使用例に発生した膵壊死感染では,原因菌のスペクトラムがグラム陽性菌や真菌優位に変化していたことが報告されている 8).オランダで行われた多施設共同観察研究の結果では,抗菌薬の長期投与は腸球菌感染リスクと相関すること,さらに腸球菌感染は新規かつ持続する臓器不全発症リスクおよび死亡リスクと相関することが示された 9).また,重症急性膵炎における腹腔内真菌感染は,臓器不全やICU入室と相関することが報告されている 10).日本で行われた多施設共同観察研究において,予防的抗菌薬投与が膵壊死のカンジダ感染リスクと相関することが示された 11).

膵壊死感染発生率.

致命率.

外科的インターベンション実施率.
有症状の非感染性WONまたは仮性嚢胞に対して内視鏡治療を行う際に,予防的抗菌薬投与が有用であるかを検証したプラセボ対照RCTが報告されている.この研究の結果では,感染発生率,手技に伴う偶発症発生率,臨床的成功率のすべてで予防的抗菌投与群とプラセボ群で差がなかった 12).
まとめると,無症候性WONを対象とした研究ではないものの,WONと連続した病態であるANPに対する予防的抗菌薬投与の効果は,7つのRCTのメタ解析の結果証明されなかった.効果が証明されないばかりか,予防的抗菌薬投与がグラム陽性菌や真菌感染のリスクとなることが示唆されている.また,非感染性WONまたは仮性嚢胞を対象とした内視鏡治療前の予防的抗菌薬投与についても,RCTの結果有用性が証明されなかった.本ガイドラインでは,直接的なエビデンスが欠けているものの,無症候性WONに対する予防的抗菌薬投与は,臨床上の有用性が低いだけでなく,耐性菌や真菌感染のリスクを上げる懸念があると判断し,行わないことを提案する.
CQ3:無症候性WONにインターベンション治療を行うべきか?
ステートメント:慎重に経過観察し,インターベンション治療は行わないことを提案する.
修正Delphi法による評価:中央値9,最低値7,最高値9
推奨の強さ:2,エビデンスレベル:C
解説:
ANPの30~50%程度が,感染や臓器不全を発症せず良好に経過することが報告されてきた 1)~3).発熱や腹痛などの症状がまったくない,無症候性WONに対して侵襲的なインターベンション治療を行うべきか,臨床上の課題である.
この課題に対するエビデンスを整理するため,PubMedおよび医学中央雑誌において,創設から2024年1月10日までの期間に,① acute pancreatitis,② (acute necrotizing pancreatitis) or (WON) or (walled-off necrosis) or (WOPN) or (walled-off pancreatic necrosis) or (ANC) or (acute necrotic collection),③ (sterile) or (asymptomatic),④ (intervention) or (drainage) or (necrosectomy) or (endoscopic management) or (step-up approach)の検索用語を用いて,網羅的に文献検索を行った.検索式により得られた文献に,検索式外の4文献を加えた計174文献を対象にスクリーニングを実施し,無症候性WONの自然経過に関する5文献と非感染性WONのインターベンション治療に関する4文献を抽出し,システマティックレビューを実施した.
無症候性WONの自然経過を観察した報告の概要をTable 5に示す 4)~8).まとめると,観察期間内に約70%(44~82%)の症例が継続して無症状であり,全体の約40%(0~59%)は観察期間内にWONが自然消退した.その一方,約30%(15~56%)の症例で観察期間内に合併症が出現し,その多くは感染であった.しかしながら,それらは発生後にインターベンション治療を行うことにより全例で改善し,致命率は0%であった.

無症候性WONの自然経過を観察した報告.
無症候性WONに対するインターベンション治療成績の報告は検索した範囲で認めなかったが,非感染性WONを対象とした報告は散見された(Table 6) 9)~12).これらの報告における,インターベンション治療の適応は,腹痛,消化管通過障害,閉塞性黄疸,栄養障害(体重減少)を認める症例とされていた 9),11),12).非感染性WONに対する治療成績をまとめると,治療成功は約90%(84~99%)と良好であり,長期成績に限っても治療成功は約85%(84~88%)であった.その一方,約24%(20~26%)の症例で治療に伴う偶発症が認められた.特にインターベンションに伴う2次的感染について調べた報告によると,73%の症例で術前には認めなかった感染を発症した 12).治療に伴う入院期間は報告により異なるが,3~29日.再発率は約19%(18~20%),治療に伴う致命率は1.2%(0~1.8%)であった.

非感染性WONに対するインターベンション治療成績.
まとめると,無症候性WONの約40%は経過観察中に自然消退することが期待できる一方,約30%の例で感染などを後に発症するリスクがある.しかし,それらの合併症は発症後に治療することが可能であり,これまでの報告で死亡例はみられない.無症候性WONに対するインターベンション治療成績は不明であるが,非感染性WONへのインターベンション治療成績から考えると,治療に伴う偶発症が一定の頻度で発生することが予測でき,治療に伴う入院期間の延長や費用の負担が発生する.無症候性WONに対しては,インターベンション治療の適応とせず慎重に経過観察を行い,感染などを合併した症例にのみインターベンション治療を実施することを提案する.
CQ4:感染性WONにインターベンション治療を行うべきか?
ステートメント:保存的治療に反応しない症例にはインターベンション治療を行うことを推奨する.
修正Delphi法による評価:中央値9,最低値8,最高値9
推奨の強さ:1,エビデンスレベル:C
解説:
感染性WONに対する治療として,保存的治療とインターベンション治療を比較した検討はこれまでにも多くなされている.van Santvoortら 1)による639例の壊死性膵炎患者を対象とした前向き研究では,397人(62%)の患者は保存的に改善したが,242人(38%)においては感染の合併あるいは症候性のためにインターベンション治療が必要となったとされている.
また,Boxhoornら 2)による介入のタイミングを検討した研究でも,登録された104人の感染性膵壊死患者のうち49名が待機的ドレナージに割付けられたが,49名のうち1例が状態悪化のために割付けから24時間以内に,観察期間全体では11例(22%)がドレナージを施行されている.
これらの結果から,保存的加療のみで治癒可能な症例も確かに一定数存在するが,保存的加療では反応が乏しい場合や患者の状態によっては,適切なタイミングでインターベンション治療を行う必要があると考えられる.
CQ5:WONになるまでインターベンション治療の介入を待つべきか?
ステートメント:待機的に治療可能な症例では被包化されたWONになるのを待ち(通常4週間前後),インターベンション治療を行うことを提案する.
修正Delphi法による評価:中央値9,最低値7,最高値9
推奨の強さ:2,エビデンスレベル:C
解説:
壊死性膵炎後の感染性膵壊死に対するインターベンション治療の時期については,外科治療が主流である時代から長く議論されてきた.2011年に発表された壊死性膵炎639例の検討 1)において致命率は2週以内,2~4週,4週以降のインターベンション治療で,56%,26%,15%と低下するなど,インターベンション治療の時期が遅いほど致命率・偶発症ともに低いことが示された.さらに改訂アトランタ分類 2)において,急性膵炎発症後4週間前後で被包化がみられることが多いことから,急性膵炎発症後4週以内はANC,4週以降はWONと定義されたこともあり,4週間以内のインターベンションが避けられてきた.実際には被包化の時期は症例によっても異なり,4週以前・以降にインターベンション治療を行った症例において,Trikudanathanらの報告 3)では6.8%・42.5%,Oblizajekらの報告 4)では 42.1%・89.5%で被包化が認められたと報告されている.日常臨床においては発症後4週以内であっても,感染・腹痛などの症状の増悪により早期にインターベンション治療が臨床的に必要となることも少なくないため,近年急性膵炎発症後4週前後でのインターベンション治療の治療成績を比較するメタ解析も相次いで報告されている 5)~10).
今回内視鏡的経消化管ドレナージに限定して,急性膵炎後のドレナージ時期について検討した7研究818症例のメタ解析を行った 4),11)~16).急性膵炎発症4週以内の早期ドレナージは,後期ドレナージと比較して,技術的成功は同等であり,臨床的成功(OR:0.44,95%CI:0.16~1.21,p=0.11),偶発症(OR:1.62,95%CI:0.73~3.62,p=0.23),ネクロセクトミー施行率(OR:2.12,95%CI:0.48~9.35,p=0.32),致命率(OR:1.65,95%CI:0.51~5.35,p=0.40)と有意な違いを認めないものの,いずれも後期ドレナージで良好な傾向を認めた.早期ドレナージを要した症例でよりWONの状態が悪いというバイアスの可能性はあるものの,4週以内の早期ドレナージをルーティンで行うことは推奨されない結果であった.一方で被包化されている症例では4週以内の経消化管的インターベンション治療も安全に施行可能であるという報告もあり 13),17),被包化されたWONであれば必ずしも4週以降でなくとも臨床的に必要と判断した場合にはインターベンション治療を行うことは許容されるものと考えられる.ただし感染性膵壊死に対する早期ドレナージとWON形成後ドレナージのRCT 18)では,早期ドレナージは偶発症・死亡を減らさず,処置回数が増え,待機的な治療が可能な症例におけるWON形成前のインターベンション治療の優越性は示されていない.
以上より通常4週間前後にみられる被包化されたWONになるのを待ち,インターベンション治療を行うことを提案する.ただしこれまでの報告は後方視的解析が多く,被包化の有無に注目した適切なインターベンション治療の時期については,今後エビデンスレベルの高い研究が必要である.
CQ6:出血性有害事象の高リスク症例にドレナージは許容されるか?
ステートメント:適切な対応を行った上でドレナージを行うことは許容される.
修正Delphi法による評価:中央値9,最低値7,最高値9
推奨の強さ:2,エビデンスレベル:D
解説:
WONに対するドレナージにおいて出血は遭遇する機会の多い偶発症の一つであるが 1),2),その具体的な内容については,仮性動脈瘤からの出血と穿刺部位やステント留置部位からの出血に大別される.仮性動脈瘤からの出血は血管の破綻によるものであるため凝固能は影響しないと考えられるが,穿刺部位やステント留置部位からの出血については凝固能が影響すると考えられる.保存的加療で臨床症状や炎症所見が改善しない場合には,出血のリスクとドレナージの必要性を考慮した上で施行する必要があるが,現時点では出血傾向,播種性血管内凝固症候群(DIC),抗血栓薬服用者など,出血性有害事象のリスクが高いと考えられる症例において,どの程度の凝固能であればドレナージが施行可能であるか,抗血栓薬をどのくらいの期間中止すべきかなど明確なエビデンスは示されていない.
Oguraら 3)は抗血栓薬・抗凝固薬がEUS-guided biliary drainage(EUS-BD)の偶発症発生に与える影響について検討しているが,「抗血栓薬服用者に対する消化器内視鏡診療ガイドライン」 4),5)に則って行ったところ,出血性偶発症発生率は7.3%と,対象群2.6%と比較して有意な差はみられなかったと報告している.また,凝固異常を合併した症例に内視鏡ドレナージを行った症例報告も複数あり,血友病Aを背景に有するWON症例に対して凝固因子の補充を行いながらドレナージを行ったところ,出血性有害事象を起こさずに治療を完遂できたとする症例が本邦から報告されている 6).さらに,アルコール性肝硬変に伴う血液凝固異常を背景に有するWON症例に対してドレナージを施行したところ,嚢胞壁からの出血を認めたが,吸収性局所止血剤(ピュアスタット)を用いることによって止血でき,安全に治療を完遂できたと報告されている 7).
以上のことから,ドレナージが必要であると判断された場合には,「抗血栓薬服用者に対する消化器内視鏡診療ガイドライン」に則った休薬と,モニタリングおよび出血が起こった際の準備を整えた上でドレナージを行うことは許容されると考えられる.
CQ7:WONのインターベンション期間中に経口摂取は可能か?
ステートメント:全身状態が良好であれば経口摂取は可能である.
修正Delphi法による評価:中央値9,最低値7,最高値9
推奨の強さ:2,エビデンスレベル:D
解説:
WONに対して内視鏡的にステントや経鼻チューブなどのドレナージデバイスが留置された状態である間(以下,「インターベンション期間中」という)は消化管とWON内腔が交通している状態であり,経口摂取の悪影響が懸念される.一方,経静脈栄養には,特に長期にわたる栄養法として問題が多く指摘されており,経管経腸栄養は患者苦痛の問題の他DENを繰り返す場合の再留置の煩雑さも問題となる.したがって,インターベンション期間中に経口摂取を再開すべきかどうかは臨床的課題である.
この課題に対するエビデンスを整理するため,次の方法でシステマティックレビューを行った.PubMedおよび医学中央雑誌において,創設から2024年1月10日までの期間に,① walled off necrosis,② pancreatic cyst,③ endoscopic intervention,④ EUS-guided intervention,⑤ endoscopic drainage,⑥ EUS-guided drainageの検索用語で,網羅的に検索を行った.内視鏡的ドレナージ以外の手法によるもの,10例以下の報告,editorialやcommentary,reviewを除外し,インターベンション期間中の経口摂取に関する記載がある論文の抽出を行った.
インターベンション期間中に経口摂取を再開すべきか,ないし経口摂取をしてもよいか,という課題を設定した研究は,前向き,後ろ向きを問わずみられなかった.その他の研究課題に対して行われた前向き研究においても,経口摂取の有無による成績に言及した研究はみられず,メタ解析は行うことができなかった.前向き研究のうち食事再開に関する規定が記載されていたものは,大口径金属ステント(lumen apposing metal stent:LAMS)留置後4時間腹痛と嘔吐がなければ,同日の夕食からsoft dietを再開したと記載している単群試験が1編みられたのみであった 1).同試験では88例にLAMSが留置され,64例では経過中にnecrosectomyが行われた.再開時の食形態以外の食事内容について記載はなく,また食事に関連した有害事象の有無については述べられていないため,その是非は不明である.別の無作為化比較試験では,oral feeding再開までの期間中央値が8日(4~168日)であったと報告しているが,再開時のステントの状態や再開基準については記載がみられない 2).その他に,ドレナージ中の経口摂取の方法や再開基準に関して明確に定めた前向き報告はみられなかった.したがって,インターベンション期間中の経口摂取の臨床的効果を評価することができるエビデンスは乏しい.
後ろ向き研究においては,いくつかの研究でインターベンション期間中の経口摂取に関する記載がみられた.LakhtakiaらはLAMS留置の6時間後から液体の摂取を許可していると記載しており,この点と有害事象の関連は不明であるものの,他の研究と比較して特段有害事象が多い結果ではなく,問題ない診療手法であると考えられる 3).固形物の摂取に関してAburajabらは,LAMSによるドレナージを行う際に内腔に両端ピッグテイル型ステントを留置した群としなかった群を比較した研究で,後者の群でのみ嚢胞内に食事内容が観察された症例がみられた(17%)と報告している 4).プラスチックステント(PS)や経鼻チューブの場合は,治療48時間後に経口摂取を開始したとする報告(詳細は不明) 5),全身状態によって一部の症例で7日以内に通常食の摂取を開始できたとする報告 6)がみられる.Choらは,留置デバイスがLAMSかPSかに関わらず多くの症例で治療後2日以内にoral feedingを再開し,1週間以上の絶食を要した2例の要因として重度の急性膵炎と手技関連有害事象を挙げている 7).また10例以下の報告ではあるものの,LAMSや食道用金属ステントの留置後に腹痛と有害事象がなければ食事を再開したとする報告もみられ(いずれも内容は不明) 8),9),症状も考慮すべき因子と考えられている.
以上より,経口摂取に関する記載がある報告のみを参照すると,手技関連有害事象および腹痛や嘔気などの臨床症状がない場合には,早期の経口摂取を検討してよいと考えられる.ただし,LAMSを単独で留置する場合には固形物がWON腔に流入してしまうリスクを認識すべきである.なお,被包化されていない貯留に対するドレナージを行った場合は,さらに慎重に判断する必要がある.
その他の多くの報告で,インターベンション期間中の栄養法として経管経腸栄養に関する記載がみられた.ドレナージ中は全症例で経腸栄養としたとする報告も複数みられ 10),11),インターベンション期間中の経腸栄養に関連した直接的な有害事象の報告はみられず,急性膵炎に対する経管栄養の効果同様 12),13),有益な栄養法と考えられる.しかしながら,ネクロセクトミーの際に経腸栄養チューブが干渉したり,チューブ位置が浅くなったりする可能性があり,ネクロセクトミーのたびに再留置する費用対効果に関しては症例によって検討する必要がある.
適切な食事形態について十分なエビデンスがないため,本ガイドライン作成委員14名(うち1名棄権)にアンケート調査を行った.4つの設問に対する回答数を以下に示す.
【質問1】インターベンション期間中の食事形態を検討する際に,留置ステントの種類・形状・本数や,留置位置などの条件を重視するか(例えば,LAMS留置の場合は固形物を避ける,噴門部や胃体部大彎に留置した場合は経口摂取を避ける,といった決定の仕方をすることがあるか).
(回答)あまり重視しない:9,重視することがある(重視する条件がいくつかある):4,重視する:0
【質問2】何らかのステントを用いたインターベンション期間中,最も条件が整った場合の食事形態はなにか.なお全身状態として,発熱や腹痛など感染性WONによる症状の軽快,血液検査成績の改善傾向などを参考に,他の問題(嚥下機能低下,イレウスや腸蠕動低下,高度下痢,呼吸不全,心不全など)がないことを総合的に判断し,これが良好であるものとする.
(回答)通常の食事:13,半固形食・流動食・水分のみ・絶飲食:0
【質問3】特にLAMS(単独)が留置されている期間中に,最も条件が整った場合の食事形態はなにか.
(回答)通常の食事:12,半固形食:1,流動食・水分のみ・絶飲食:0
【質問4】何らかのステントを用いた初回ドレナージの後,流動食以上の経口摂取は,最短でいつ頃から検討するか.
(回答)当日:0,翌日:5,2~6日後:8,7日後以降:0
以上の結果より,本邦のハイボリュームセンターにおけるインターベンション期間中の食事として,通常食が広く許容されている可能性が高い.インターベンション期間中の食事形態や開始時期に関するさらなる研究が望まれる.
FRQ1:WONのインターベンション期間中に制酸薬は中止すべきか?
ステートメント:制酸薬を中止したほうがよい可能性がある.
解説:
WONのインターベンション治療における制酸薬の投与に関して言及したガイドラインは今までに存在しない.
胃内は本来胃酸の影響でpHが低く保たれており,この低pH状態がWON内部の壊死組織の液状化を促進し,細菌の増殖を防ぐ働きをしている可能性がある.制酸薬の投与により胃内のpHが上昇し本来の浄化作用が期待できなくなる恐れがある.一方で制酸薬投与を控えることにより消化管潰瘍や,胃酸によるWON内の動脈瘤形成が増加する可能性も懸念される.
しかし本Questionに関して検討した研究は現在のところ症例対照研究1本のみである.2019年にPowersら 1)は272例を後方視的に解析し,内視鏡ドレナージ時にプロトンポンプ阻害薬を使用していた群136症例と非使用群136例間で技術的成功,臨床的成功,内視鏡処置回数および偶発症に関して比較検討した.結果,技術的成功,臨床的成功は両群で差は認めなかったが,臨床的成功を達成するまでに必要となった内視鏡的ネクロセクトミーの回数は使用群4.6回 vs 非使用群3.2回と有意に非使用群で少なかった.また,偶発症全体は両群で差を認めなかったが,ステント閉塞のみがプロトンポンプ阻害薬使用群で有意に多くなっていた.
今後推奨を確定するためには前向き研究を含めさらなる検討が必要である 2).
CQ8:WONのインターベンション治療において仮性動脈瘤の評価を行うべきか?
ステートメント:事前に造影CTにおいて仮性動脈瘤の評価を行った上で開始し,インターベンション期間中も適宜再評価することを推奨する.
修正Delphi法による評価:中央値9,最低値7,最高値9
推奨の強さ:1,エビデンスレベル:C
解説:
仮性動脈瘤はWONによる炎症波及,あるいはインターベンション治療中の直接的な動脈損傷により生じる.壊死性膵炎に伴って仮性動脈瘤を来すのは全体の約1~10%と報告されている 1)~3).仮性動脈瘤は膵内および膵周囲動脈のみならず腸間膜や結腸間膜内の小動脈にも生じうる 4),5).仮性動脈瘤は致命的な出血を引き起こす可能性がある一方で,約20%は貧血や腹痛,消化管出血といった臨床症状なく偶発的に発見されていることに注意が必要である 3).したがって,無症候であってもWONに対するインターベンション治療においては仮性動脈瘤の評価が必要である.
WONに対するインターベンション治療に際しては,事前に血液検査結果や既往歴,内服歴を照会し出血素因の確認を行う.出血傾向や抗血栓薬服用例では「抗血栓薬服用者に対する消化器内視鏡診療ガイドライン」に則って適切な対応を行う 6).続いてインターベンション治療を行う前に,腎機能や造影剤アレルギーを考慮の上で,造影CTを行い膵炎に伴う仮性動脈瘤の有無を確認することが重要である.多列検出器CT(Multi-detector row CT:MDCT)を用いたダイナミックスタディ,あるいは,動脈相で膵炎における出血,仮性動脈瘤の同定能が感度94.7%,特異度90.0%と高い 7).さらに事前の造影CTによってWON内部や周囲の血管の走行をある程度把握しておくことは重要である 8).事前検査において仮性動脈瘤を認めた場合には,血管造影(Interventional Radiology:IVR)によるコイル塞栓術が有用である.
WONに対するインターベンション治療期間中も仮性動脈瘤に注意を払う必要がある.初回のインターベンション治療においては血管の直接損傷を防ぐためにEUS下にカラードップラーを用いて穿刺ラインに明らかな血管がないかを確認すべきである.初回のインターベンション治療に続いて行われる内視鏡的ネクロセクトミーにおいても仮性動脈瘤は大きな問題となる.内視鏡的ネクロセクトミー治療中には壊死物質の影響で全体構造を把握するのが困難な場合があり壊死物質除去中に動脈を損傷し,重篤な出血を来す可能性がある.治療インターバル期間中においても感染に伴う持続的な炎症波及によって仮性動脈瘤の形成される可能性がある.また,内視鏡的ネクロセクトミー施行中の患者において仮性動脈瘤は0~8.5%で認められると報告されている 9)~12).以上より,WONに対するインターベンション治療にあたっては事前の仮性動脈瘤の評価に加えて,治療期間中においても,定期的な造影CT撮影を行うなどのフォローを行うことが検討される.
CQ9:WONに対する初回インターベンション治療にはEUS下経消化管ドレナージが推奨されるか?
ステートメント:初回インターベンション治療として,EUS下経消化管ドレナージを行うことを提案する.
修正Delphi法による評価:中央値8,最低値7,最高値9
推奨の強さ:2,エビデンスレベル:C
解説:
WONに対する治療戦略は近年大きく変化している.従来,早期の外科的ネクロセクトミーが標準治療とされてきたが,侵襲性が高く,高い致命率や偶発症発生率が問題となっていた 1).近年は内視鏡的治療が普及してきており,EUS下穿刺ドレナージ(EUS-guided transluminal drainage:EUS-TD)は低侵襲でありながら高い治療成功率が報告されている 2).特に,感染を伴う液状化したWONに対しては,EUS-TDが第一選択と位置付けられている.EUS-TDは主膵管との交通の有無に関わらず施行可能であり,複数のPSやLAMSの留置により良好なドレナージが得られる 3).さらに,ドレナージ効果が不十分な症例に対しては内視鏡的ネクロセクトミーを追加することで治療成績の向上が期待できる 4).
WONに対するドレナージ治療としては,EUS-TD,経皮的ドレナージ,外科的ドレナージが報告されている.本ガイドライン作成にあたり① 壊死性膵炎 or 被包化壊死 or 急性壊死性貯留(walled-off necrosis or necrotizing pancreatitis or acute necrotic collection),② ドレナージ(drainage),③ 内視鏡的 (Endoscopic ultrasound guided or Transmural or Transluminal),外科的 (Surgical or Laparoscopic) ,経皮的(Percutaneous)を検索用語としてPubMedおよび医学中央雑誌において報告された2024年1月10日までの論文を網羅的に検索した.EUS-TDと外科的ドレナージ(腹腔鏡的嚢胞胃吻合術)の比較に関する2件のランダム化比較試験のシステマティックレビューでは,手技成功率(OR:1.36,95%CI:0.46~4.01)(Figure 4),臨床的成功率(OR:1.57,95%CI:0.41~5.97)(Figure 5),偶発症発生率(OR:1.36,95%CI:0.29~6.45)(Figure 6)ともに両群間に有意差はみられなかった 5),6).ただし,外科的アプローチは全身麻酔を要し,手術時間も長くなるため侵襲性が高い.そのため,より低侵襲なEUS-TDが第一選択となりうる.ただし,EUS-TDが難しい部位の病変など,外科的治療の優先度が高い症例も存在するため,個々の症例に応じた適切なアプローチ法の選択が重要である.

手技成功率.

臨床的成功率.

偶発症発生率(Clavien-Dindo Class Ⅲ以上).
注:Garg 2020の論文について:EUS-TD群で5例,外科手術群で6例の仮性嚢胞症例を含む.
EUS-TDと経皮的ドレナージを一次治療として直接比較した2件の後ろ向き研究では,手技成功率は同等であったが(98% vs 97~98%),経皮的ドレナージは臨床的成功率が低く(23~62% vs 67~90.5%),偶発症発生率が高かった(57% vs 6~7%) 7),8).したがって,経皮的ドレナージはEUS-TDが困難な症例や不成功例に対するサルベージ治療として位置付けられる.
BQ4:WONに対するEUS下経消化管ドレナージにおけるアプローチ法とステントの種類は?
ステートメント:PSと金属ステントが使用されている.アプローチ法にはSGT,MTGT,SGTMDがある.
解説:
感染性WONに対する内視鏡的治療として,EUS下の経消化管ドレナージが第一選択となる.EUSを用いることで,消化管内腔へ膨隆していない病変に対してもドレナージが可能となる 1).ドレナージのルートとしては経胃的アプローチが一般的だが,膵壊死の部位によっては経十二指腸的アプローチが選択される.特に膵頭部や十二指腸近傍の膵壊死では,経十二指腸ドレナージが有効であることが報告されている 2).
ドレナージ手技としては,Single transluminal gateway technique(SGT)(Figure 7) 3),Multiple transluminal gateway technique(MTGT)(Figure 8) 4),Single transluminal gateway transcystic multiple drainage(SGTMD)(Figure 9) 5)が用いられる.SGTは単一の経消化管ルートから単一のステントを留置する標準的な手技である.これに対しMTGTは,複数の経消化管ルートから複数のステントを留置することで,より効果的なドレナージを図る手技であり,膵壊死の大きさや形状が複雑な場合に選択される.SGTMDは,SGTにより留置したステントの内腔を介して,複数の経胞性ドレナージを追加する手技であり,SGTでは不十分なドレナージが予想される場合に選択肢となりうる.

Single transluminal gateway technique(SGT).

Multiple transluminal gateway technique(MTGT).

Single transluminal gateway transcystic multiple drainage(SGTMD).
ステントの選択肢としては,両端ピッグテイル型PS,フルカバー型金属ステント,LAMSがある.PSは手技的には扱いやすいが,内腔が狭く閉塞のリスクがある.金属ステントは内腔が広く,ドレナージ効率に優れる.LAMSは金属ステントの一種だが,フレア状またはダンベル状のデザインにより逸脱が少なく,LAMSを経由してのネクロセクトミーにも使用可能という利点がある 1),6).
ステントの種類による治療成績の差異については様々な研究が行われているが,いまだ結論は出ていない.PSとLAMSで臨床的・技術的アウトカムに大きな差はないとする報告がある一方で 7),LAMSのほうが入院期間が短く,ネクロセクトミーの回数も少ないとの報告もある 8).ただしLAMSでは出血のリスクが高いとの指摘もある 9).2020年に発表された30研究1,524例を対象とした大規模なメタアナリシスでは,LAMSとPSで出血や穿孔,ステント閉塞などの偶発症発生率に有意差は認められなかった 10).
膵壊死腔内の液体成分が粘稠で感染を伴う場合には,ステントのみでは不十分なドレナージとなる可能性がある.Siddiquiらは後ろ向き研究で,感染を伴う膵仮性嚢胞に対し,両端ピッグテイル型PSに加えて経鼻ドレナージチューブを留置することで,洗浄による感染コントロールが可能となり,ステント単独留置と比較して短期治療成績が向上したと報告している 11).一方,Yuanらのランダム化比較試験では,10cm以上の巨大膵仮性嚢胞に対し,両端ピッグテイル型PS単独群と比べ,経鼻ドレナージチューブの併用群では,ステント閉塞率が低下し,入院期間が短縮したと報告されている 12).ただし,これらの研究の対象は主に膵仮性嚢胞であり,WONとは病態が異なる点に注意が必要である.WONでは壊死組織が主体であり,仮性嚢胞のように液体成分が多くないため,経鼻ドレナージの有用性については今後のエビデンスの蓄積が必要と考えられる.
現時点では,ドレナージ法の選択は施設の方針や術者の経験・習熟度に基づいて行われることが多い.ただしLAMSはPSよりもコストが高いことから,医療経済的な観点からは議論の余地がある 13).LAMSは手技が容易であるため普及が進んでいるが,コストに見合う有用性があるのかについては,さらなるエビデンスの蓄積が必要である.
【コラム】
WONに対する外科的治療法は?
感染性WONのほとんどが内視鏡的アプローチ法で治療可能な時代となった.Step-up approachの原則から,WONの外科的治療が必要となるのは内視鏡的治療で十分な壊死組織を除去できない場合である.手術法としてビデオ補助下経後腹膜アプローチ手術(video-assisted retroperitoneal debridement:VARD),腹腔鏡下手術,開腹手術がある 1).この中で腹腔鏡下手術に相当する保険術式(Kコード)が2024年度診療報酬改訂の時点で存在しないので,実施に際して当該厚生局と事前に協議しておく必要がある.「急性膵炎診療ガイドライン2021年版」 2)の開腹手術とVARDの比較のメタ解析では,VARDで致命率や偶発症率が低く,そのためまずVARDを選択することが提案されている.
VARDを選択する場合,経皮的ドレナージチューブが挿入されていることも多く,これをナビゲーションとして皮膚に小切開孔を作り,そこからビデオ補助下に壊死物質除去を行う.一度に除去できる壊死物質に制限があり,出血時の止血対応にやや難渋することもあるが,小さい創から後腹膜腔内を観察しながら処置を行えるため,低侵襲で整容性に優れる.また処置中の消化管損傷のリスクも低い 1).1セッションですべての壊死物質を除去できない場合には小孔を残し,後日経皮的に太めの内視鏡を用いた壊死物質除去を行うことも可能である.
経腹アプローチ法は侵襲は高いが,一度に多くの壊死物質を除去することができ,止血操作も比較的容易にできる.またWONと消化管の間に瘻孔が存在する場合にバイパス術や人工肛門造設術を付加することも可能である.
内視鏡的処置の進歩とともにWONに対する外科的治療を行う機会は激減したが,一方で術前精査中のEUS下生検やERCPに付随した膵炎に伴うWONの治療を,膵切除術中に行わなければならないことがしばしばある.非感染性WONであっても手術を契機に感染を併発することも多く,また切除範囲内にWONがあれば必然的にWONの切除ないし開放を行わなければならない.特に胃周囲のWONを遺残させる場合には,術中にWONと胃の間に自動縫合器を用いてデルタ式吻合を作っておくと,のちにその吻合孔を利用して経胃内視鏡的壊死物質除去を行うことができる.これは半永久的にLAMSを留置した状態と同じであり,脾門部の深い位置でも比較的容易に行うことができるため,積極的に行っておきたい.
CQ10:内視鏡的ステップアップ・アプローチは外科的ステップアップ・アプローチと比較して有用か?
ステートメント:感染性膵壊死に対するインターベンション治療は,内視鏡的ステップアップ・アプローチが提案される.解剖学的に内視鏡的アプローチできない症例においては,外科的アプローチを検討する.
修正Delphi法による評価:中央値9,最低値7,最高値9
推奨の強さ:2,エビデンスレベル:B
解説:
感染性膵壊死に対するステップアップ・アプローチは,症状や偶発症の重症度に応じて段階的に侵襲的な治療を行っていくものである.まずドレナージを行い(Figure 10),ドレナージ治療に不応であればネクロセクトミーへと移行する(Figure 11).内視鏡的ステップアップ・アプローチは,EUS下に上部消化管からPS,LAMS,経鼻嚢胞ドレナージチューブを用いてドレナージを行い,状態が改善しないようであれば経消化管的に内視鏡的ネクロセクトミーを行う方法であり 1)~3),外科的ステップアップ・アプローチは,経皮的ドレナージ(Figure 12)を行い,効果不十分であればそれに引き続きVARDを含む外科的ネクロセクトミー(Figure 13)を行う方法である 4).

EUS下穿刺ドレナージ(EUS-TD).

内視鏡的ネクロセクトミー.

経皮的ドレナージ.

外科的ネクロセクトミー.
感染性膵壊死に対する内視鏡的と外科的ステップアップ・アプローチを比較した試験に関するシステマティックレビューを行った.PubMedおよび医学中央雑誌において,2024年1月10日までに,① 壊死性膵炎 or 被包化壊死 or 急性壊死性貯留(walled-off necrosis or necrotizing pancreatitis or acute necrotic collection),② ステップアップ・アプローチ(step-up approach),③ 内視鏡的or 外科的 or 経皮的(endoscopic or surgical or laparoscopic or percutaneous)を検索用語として該当する論文を網羅的に検索した.感染性膵壊死に対する内視鏡的と外科的ステップアップ・アプローチのランダム化比較試験(randomized controlled trial:RCT)を3編認め,そのRCT 3編を用いてメタ分析を行った(Figure 14) 1)~3).重症偶発症/致命率はRelative risk:0.46(95%CI:0.17~1.27)であり内視鏡的ステップアップ・アプローチで少ない傾向であったが有意差は認めなかった.一方,入院期間[Mean difference -8.26 days(95%CI:-14.97,-1.54)]と膵液皮膚瘻発生率[Relative risk 0.13(95%CI:0.03~0.36)]は,内視鏡的ステップアップ・アプローチのほうが有意に短く,低かった.内視鏡的ドレナージが困難な部位には外科的ステップアップ・アプローチが有用な場合もあり,いずれの手法においても解剖学的にアプローチが困難な部位が存在することに留意する.

内視鏡的と外科的ステップアップ・アプローチの比較検討.
内視鏡的ステップアップ・アプローチで入院期間が短い原因として,外科的ステップアップ・アプローチではドレナージからVARDへの移行の閾値が内視鏡的アプローチに比較して高い可能性がある 2).膵液皮膚瘻の形成については,内視鏡的アプローチは内瘻アプローチが中心となるために膵液皮膚瘻が問題となる可能性は低い 3).また,重症偶発症/致命率では,内視鏡的ステップアップ・アプローチで低い傾向を示すのみであったが,時代背景で2編のRCT 1),2)ではLAMSが使用されておらず,結果に影響した可能性もあり,今後さらなる検討が必要である.
内視鏡的と外科的ステップアップ・アプローチのRCT 2)に参加した症例の長期成績(平均観察期間7年)を比較検討した報告を認める 5).長期成績においても,重症偶発症/致命率[RR:0.93(95%CI:0.65~1.32)]は有意差を認めなかったが,膵液皮膚瘻[RR:0.23(95%CI:0.08~0.83)],再インターベンション[RR:0.29(95%CI:0.09~0.99)]は内視鏡的ステップアップ・アプローチで有意に少なかった.
CQ11:WONに対する内視鏡的ステップアップ・アプローチに経皮的アプローチの併用は有用か?
ステートメント:広範に及ぶWONや内視鏡的アプローチのみでは治療に難渋する症例に対して経皮的アプローチを併用することを提案する.
修正Delphi法による評価:中央値9,最低値7,最高値9
推奨の強さ:2,エビデンスレベル:D
解説:
多くの症例は内視鏡的ステップアップ・アプローチで治療可能となってきているが,多房性で複雑な形態を呈する症例や膵周囲から左右の腎周囲さらに骨盤腔にまで病巣が及ぶような症例に対しては,効率よく内視鏡的ネクロセクトミーを行うことが難しく,経消化管的アプローチ単独では治療に難渋する 1).そのような治療困難例に対する内視鏡的追加ドレナージの工夫も報告されているが,骨盤腔まで及ぶような病巣に対してはその効果も限定的と考えられる 2),3).
経皮的ドレナージは,低侵襲で有効な方法であるが内瘻化できないことからの再発リスク,難治性皮膚瘻などの偶発症リスクや患者のADLを低下させるといったデメリットが懸念されるため経消化的治療が優先される 4),5).しかし,経消化管的ではアプローチが困難な骨盤腔の病巣に対しては,腹壁からの経皮的アプローチのほうが効率よく治療を遂行することができる.経消化管的内視鏡治療に固執することなく,早期に経皮的な治療を追加する併用療法(dual modality drainage)により,ネクロセクトミーを含む処置回数を減少させ,偶発症の発生リスクを下げることで臨床成績のさらなる向上が期待される 6)~8).117例の広範囲に病巣が及ぶサイズが大きなWONに対して,この併用療法を早期に用いることで,臨床奏効率88%と良好な治療成績が得られ,経皮的ドレナージチューブは治療後に全例で抜去して,難治性皮膚瘻を形成することもなかったと報告されている 9).さらに,低侵襲な外科手術法であるVARDを応用して,消化管から離れた腹壁に近い壊死組織巣に対する経皮的な内視鏡的ネクロセクトミーの方法も開発されている 6),10)~18).経皮的ドレナージにより瘻孔形成後,もしくは一期的に経皮的金属ステントを留置することで上部消化管直視スコープを病巣内に挿入することが可能であり,経皮的に内視鏡的ネクロセクトミーを行うことができる.専用の金属ステントはないので食道ステントなどが代用されているが,本邦では保険適応外使用となることに留意する必要がある.太径の経皮ドレナージチューブ(22〜32 Fr)を留置し,瘻孔がしっかり形成された後に細径内視鏡や通常の直視鏡を挿入してネクロセクトミーを行う方法もある.静脈麻酔のみで処置が可能で,呼吸状態や全身状態が悪く,経口内視鏡処置のリスクが高い場合もベッドサイドで行うことが可能であり,低侵襲で有用な方法である.
経皮的な内視鏡的ネクロセクトミーの治療成績のシステマティックレビュー(WON 282例,平均15cm大)によると,臨床治療成功率82%,処置中の偶発症率10%(多くは出血関連偶発症),処置中の致命率0%,長期偶発症率23%(皮膚瘻9%),長期致命率16%と報告されている 19).15cm以上の巨大のWON 144例だけを対象とした検討では,内視鏡的ステップアップ・アプローチによる治療を試み,困難と判断した症例に対してVARDもしくは経皮的ネクロセクトミーを併用することで,143例(99%)で低侵襲治療のみで治療完遂可能であり,開腹手術を要した症例は1例であったと報告されている 20).
他の治療法との比較検討は報告されていないが,低侵襲で治療効果が高く,効率的な治療を遂行することで医療コストも削減できると考えられるため,内視鏡的ステップアップ・アプローチで治療に難渋する症例に対して経皮的アプローチの併用は有用と考えられる.しかし,その適応,併用するタイミング,最適な経皮的アプローチ法などに関するさらなる検討が必要である.
CQ12:WONの内視鏡的経消化管ドレナージにおいて専用LAMSは両端ピッグテイル型PSより推奨されるか?
ステートメント:症例に応じて専用LAMSか両端ピッグテイル型PSを用いることを提案する.
修正Delphi法による評価:中央値9,最低値7,最高値9
推奨の強さ:2,エビデンスレベル:B
解説:
従来,EUS下ドレナージで留置するステントは両端ピッグテイル型PS(double-pigtail type plastic stent:DPS)を1本ないしは複数本留置する内瘻ドレナージ,またはDPSとともに経鼻ドレナージチューブを留置する内外瘻ドレナージが一般的であった 1).その後,ドレナージ効果が高く,両端がアンカーとなっており迷入逸脱予防がなされたEUS下ドレナージ専用のフルカバー型LAMSが開発された 2),3).一旦留置すればステント内腔から直視内視鏡の出し入れが可能で,ネクロセクトミーを含む追加処置を容易に行うことができる.さらに,穿刺・通電による拡張・ステント留置を同時に行うことができる一体型ステントデバイス(HOT-LAMS)も開発され,このデバイスを用いれば透視を使用せずにベッドサイドでもステント留置が可能である 4).本邦では,2017年10月にWONを含む膵周囲液体貯留病変に対するHOT-LAMSを用いたEUS下ドレナージが保険承認された.安全面を考慮し,定期的に行われているドライモデルと膵周囲液体貯留ウェットモデルを用いた講習会を受講した専門医のみが実臨床で施行可能である.胃壁または腸壁に密着しており,6cm以上の径を有する症候性膵仮性嚢胞または70%以上の液体成分を認める症候性WONがよい適応とされている.
WONの治療におけるLAMSの有用性を検証するため,網羅的な文献検索を行った.PubMedおよび医学中央雑誌において,創設から2024年1月10日までの期間に,① walled-off necrosis or pancreatic necrosis or necrotizing pancreatitis,② pancreatic fluid col-lection, ③ EUS-guided drainage, ④ lumen-apposing metal stent or biflanged metal stent の検索用語で網羅的に検索を行った.WONに対するLAMSとDPSを用いた経消化管治療の臨床治療成績を比較したRCT 4編 5)~8)を抽出し,メタ解析を行った.ステント留置の手技時間は有意にLAMSのほうが短かった[Mean Differences:-20.55(95%CI:-33.28〜-7.83),p=0.002]が,臨床奏効率[RR:1.01(95%CI:0.93〜1.10),p=0.84],追加の内視鏡的ネクロセクトミーを要する率[RR:1.07(95%CI:0.79〜1.45),p=0.67],内視鏡的ネクロセクトミーの平均処置回数[Mean Differences:0.04(95%CI:-0.46〜0.54),p=0.87],治療経過中の偶発症率[RR:1.11(95%CI:0.71〜1.72),p=0.65],致命率[RR:0.75(95%CI:0.34~1.63),p=0.46]はすべて同等であった(Figure 15,16,17,18,19,20).長い処置時間ではリスクが高い重症例や鎮静効果が乏しい症例などでは有用と考えられるが,すべての症例でDPSより有用とはいえない.2019年の最初のRCTでは,LAMSは大口径で良好なドレナージが得られるため急激な嚢胞腔の縮小を来し,嚢胞側のステント端が対側の嚢胞壁に当たることによる機械的刺激に起因する出血や仮性動脈瘤破裂などの出血偶発症が有意に多く注意を要するという結果が報告されている.ステント埋没症候群や出血の偶発症を減らすために治療終了後早期(2〜4週間程度)にLAMSを抜去することが望ましいと考えられている.その後の3つのRCTでは早期抜去が行われており,本メタ解析の結果では出血関連偶発症率に有意な差は認めなかった[RR:1.10(95%CI:0.54〜2.24),p=0.80](Figure 21).LAMSは高額のデバイスであるため医療コストが高いという問題もある.しかし,ネクロセクトミーなどの追加処置が効率よく治療を進めることができるため,本メタ解析での総医療コスト分析では有意な差は認めなかった[Mean Differences:-1,140$(95%CI:-11,670〜9,400),p=0.83](Figure 22).

処置時間.

臨床奏効率.

EN追加率.

EN回数.

偶発症率.

致命率.

出血関連偶発症率.

総医療コスト.
WONは大きさ,形態,内部壊死組織含有量などのバリエーションが大きく,治療難易度が症例によって異なる.「急性膵炎ガイドライン2021」で行われた,10編のコホート研究のメタ解析では,臨床奏効率はLAMS群のほうが良好との結果であった 9),10).近年,米国の先進施設からLAMSを用いた内視鏡的ステップアップ・アプローチを中心とした治療プロトコールに準ずることで95.6%という良好な治療奏効率が得られ,従来のDPSを用いた治療プロトコールよりも有意に良好な成績が得られたと報告されている 11).したがって,LAMSはWONの治療において有用なステントであるが,総合的に勘案すると両ステントの優劣をつけることはできない.それぞれの利点欠点を考慮した上で症例に応じてLAMSもしくはDPSを使い分けるべきである.
FRQ2:感染性WONに対しドレナージルートを利用した灌流療法は推奨されるか?
ステートメント:ドレナージルートを利用した灌流療法は有用な可能性がある.
解説:
WONに対する内視鏡的ネクロセクトミーは有効な低侵襲治療として確立されてきたが,ドレナージルートを介した灌流療法が補助療法として有用である可能性がある 1)~3).灌流療法は,内視鏡的ネクロセクトミーの前治療,または代替治療の位置付けであるが,実施の適応やタイミングに関しては,明確なエビデンスはない 2).日本の11施設で実施されたアンケートにおいては,灌流療法を実施しない施設は18%,必要であれば実施する施設が55%,持続的な灌流療法を行う施設が27%であった.灌流のルートとしては,内視鏡的に留置した経鼻カテーテル,あるいは経皮カテーテルから実施される 1).Tamuraらは,EUSによるドレナージ単独群と経鼻ルートからの生理食塩水を40ml/hで持続投与する灌流併用群で治療された感染性WONを比較し,持続灌流群で有意にWON消退までの期間が短く(6日 vs 32日,p=0.001),ネクロセクトミーの必要性が低かった(0% vs 55.6%,p=0.01)と報告している 4).一方,Siddiquiらは,EUSによるドレナージをLAMSで行い,その後48〜72時間の間生理食塩水による灌流を行い,その後経鼻チューブは抜去するというプロトコールで治療されたWONの患者22例と非灌流群46例を比較して,長期の臨床的成功率に差はなかったと報告している(90.9% vs 95.6%,P=0.59) 5).
また,生理食塩水に加え,過酸化水素水やストレプトキナーゼを用いた灌流療法の有用性も報告されており,Messallamらは感染性WONに対し内視鏡的ネクロセクトミー中の過酸化水素水による洗浄を行った122例と生理食塩水のみの82例を後ろ向きに比較し,過酸化水素水群で有意にWON消退率が高かった(93.8% vs 78.9%,p=0.002)と報告した 6).Bhargavaらは感染性膵壊死に対する経皮的ドレナージにストレプトキナーゼを加えた53例と生理食塩水のみの55例を比較し,ストレプトキナーゼ群で敗血症の改善(75% vs 36%,p=0.01)に優れ,外科手術移行率(34% vs 54%,p=0.016)が低い傾向にあったと報告している 7).
これらの研究から,感染性WONに対し内視鏡的ドレナージに灌流療法を組み合わせることの有用性が示唆されるものの,WONのみを対象とした灌流療法のエビデンスは後ろ向き研究が中心である.至適な灌流液の種類や量,投与速度は明らかでなく,過酸化水素水の毒性やストレプトキナーゼによる出血の可能性など,安全性も懸念される 1),6),7).感染性WONに対する内視鏡的治療において灌流療法は有望な補助療法と考えられるが有効性と安全性の確認,至適プロトコールの確立のため,さらなる前向き比較試験が求められる.
CQ13:WONの消退後にLAMSは早期に抜去すべきか?
ステートメント:遅発性の出血やステント埋没症候群などのLAMS関連偶発症を予防するために,WON消退後早期にLAMSを抜去することを提案する.
修正Delphi法による評価:中央値9,最低値7,最高値9
推奨の強さ:2,エビデンスレベル:C
解説:
WONの消退後のLAMS早期抜去の有効性を直接比較した研究は現在のところないが,複数の研究でLAMSの早期抜去が偶発症を減少させる可能性が示唆されている.
BangらのPSとLAMSの有効性を比較したRCTでは,LAMS関連偶発症がステント留置後3週以降に50%(6/12)と高率に認められた.出血による仮性動脈瘤が3例,ステント埋没症候群が2例,胆管狭窄が1例であった 1).これらの偶発症は全例で膵周囲液体貯留(peripancreatic fluid collection:PFC)が消退した時期に発生しており,LAMSの内腔圧着性の強さが原因と考えられた.この結果を受け,留置後3週間でのCT検査による評価を行い,PFCが消退していた場合にステントを抜去するプロトコールに変更したところ,重篤な偶発症は発生しなかった 2).
LAMSを用いてEUS-TDを受けた患者188人を対象とした前向き研究では,LAMS関連偶発症は6.4%に認められ,偶発症発生までの中央値は41日(IQR:17~68)であった.多変量解析では,4週間後のステント抜去(OR:4.60,95%CI:1.30〜16.3,p=0.018)とCTでのPFCのサイズが7cm以下(OR:4.33,95%CI:1.10〜17.0,p=0.036)が偶発症の予測因子であった.この結果から,サイズが7cm未満の症例では4週間以内にCT検査による評価を行い,PFCが消退していれば適時にLAMSを抜去すべきと提案されている 3).
一方,PSとLAMSを比較した別のRCTでは,中央値41日(IQR:34~50)でLAMSを抜去しているが,出血やステント埋没症候群の発生率は低く,6週以内の抜去であれば偶発症リスクは高まらないことが示された 4).さらにAhmadらの前向き研究では,6週以内のLAMS抜去により,遅発性出血は0%と予防できた 5).
しかし,WONの状態によっては,LAMS留置後4週間以降も内視鏡的ネクロセクトミーなどの治療が必要な症例もある.英国およびアイルランドの18施設からのデータを用いたLAMS(Hot AXIOSステント)の晩期偶発症の発生率とそれに関連するリスク因子を調査した研究では,晩期偶発症の発生率が17.5%(167/952),重大な偶発症が6.6%(63/952)に認められ,ステントの埋没症候群が4.7%(45/952),出血が1.9%(18/952)であった.ただし,多変量解析ではLAMS抜去時期(4~8週 vs 8週以上)と晩期偶発症の発生には相関がなかった 6).
また,30施設から集積したイタリアの研究では,偶発症は14.7%(76/516)で認められ,出血は5.6%(29/516)であった.傾向スコアマッチングを行った後,LAMSの抜去時期(早期<4週,後期>4週)に従ってサブグループ解析を行ったところ,早期群5%,後期群10%であり,偶発症発生率に有意差はなかった(p=0.19) 7).
以上のように,WONの消退後にLAMSを早期に抜去することの利益を直接比較する研究はないものの,複数の研究結果からLAMSの早期抜去が偶発症を減少させる可能性が示唆されている.抜去時期の目安としては約4週間から6週間が提案されているが,個々の患者の状態や臨床経過を考慮し,この期間を延長することも検討すべきである.
CQ14:LAMS抜去後にはPSを留置すべきか?
ステートメント:DPDS症例においては,LAMS抜去後にPSを留置することを提案する.
修正Delphi法による評価:中央値9,最低値7,最高値9
推奨の強さ:2,エビデンスレベル:C
解説:
PFCに対するLAMSを用いたEUS下ドレナージやそれに続く内視鏡的ネクロセクトミーは有用な治療方法として施行されている.PFC治療後には,特にDPDS症例においてPFC再発率が高い 1).Bangら 2)はPFCに対する内視鏡治療の有用性を後方視的に検討し,経過観察期間中央値2,110日でPFCの再発率は非DPDS・PS留置なし症例で1.6%(2/124),DPDS・PS留置なし症例で17.4%(8/46),DPDS・PS留置あり症例で1.7%(2/121)であり,DPDS症例においてPSの長期留置が再発予防のために有用である可能性を報告した.
LAMS抜去後にPS長期留置するかステントフリーとするかを比較した試験に関するシステマティックレビューを行った.PubMedおよび医学中央雑誌において,2024年1月10日までに,① 壊死性膵炎 or 被包化壊死 or 急性壊死性貯留(walled-off necrosis or necrotizing pancreatitis or acute ne-crotic collection),② 経消化管的ドレナージ or 超音波内視鏡下ドレナージ or 内視鏡的ネクロセクトミー(transmural drainage or endoscopic ultrasound-guided drainage or EUS-guided drainage or endoscopic necrosectomy),③ プラスチックステント(plastic stent)を検索用語として該当する論文を網羅的に検索した.対象症例はすべてDPDS症例であり,RCT1編 3),前向きコホート研究1編 4),後方視的コホート研究2編 5),6)を認め,これら4編の研究を用いてメタ解析を行った(Figure 23).再発率はRelative risk:0.19(95%CI:0.06~0.57)であり,PS長期留置はステントフリーと比較して有意にPFCの再発が少なかった.PS長期留置に関するPFC再発以外の有害事象はRR:8.19(95%CI:1.53~49.93)と有意にステント長期留置で多かったが,有害事象の内訳は無症候性ステント逸脱17例,軽度腹痛2例であり,重篤なものを認めなかった.

LAMS抜去後,PS長期留置とステントフリーの比較検討.
今回のメタ解析では,PS長期留置に関連して重篤な偶発症を認めなかったが,逸脱したステントにより消化管穿孔,腹痛,瘻孔形成,後腹膜ステント逸脱,消化管出血,胆管狭窄を来した報告 7),8)も認め,その安全性についてはさらなる検討が必要である.PS長期留置に関する経過観察期間は数年程度であり,さらなる長期間の有用性・安全性やステント抜去のタイミングなどについての検討も必要である.
CQ15:WONの内視鏡的経消化管インターベンション治療はどのような診療体制で行うのが望ましいか?
ステートメント:内科・外科・放射線科を含めた集学的治療を行える診療体制下で行うことを推奨する.
修正Delphi法による評価:中央値9,最低値7,最高値9
推奨の強さ:2,エビデンスレベル:C
解説:
WONの内視鏡治療において,治療不成功および治療関連偶発症発生の際には,外科的・放射線画像下治療によるバックアップが必要となる.内視鏡でアプローチできない部位に対しては,経皮的ドレナージや開腹あるいはビデオ支援下のドレナージ・デブリドマンなどが必要となる.重篤な治療関連偶発症(出血,嚢胞壁穿孔など)には放射線画像下治療によるコイル塞栓術や開腹手術が必要になる.これらの頻度は無視できる程の低率ではないため,WONの内視鏡治療は,内科・外科・放射線科を含めた集学的治療を行える診療体制下で行うことが望ましい.また,敗血症などのリスクが高い全身状態不良な患者群を対象にしており,集中治療管理ができる施設での実施が望ましい.ただし,これらの診療体制の有無による臨床アウトカムの差についての臨床データは報告されていない.
WONの内視鏡治療は,EUS下穿刺・ネクロセクトミーなど高度な技術を要するが,術者要件に関するエビデンスは乏しい.Varadarajuluらによる単施設の膵周囲液体貯留54例の解析では,EUS下穿刺・瘻孔拡張・ステント留置について,初期25例よりその後の29例のほうが,手技時間が短くなったことが報告されている(中央値25分 vs. 70分,p値<0.001) 1).Harewoodらによる2施設の膵周囲液体貯留175例の解析で,初期20例とその後の症例の臨床アウトカムが比較され,慢性仮性嚢胞の治療成功率が向上(45% vs. 93%,p<0.001),治療成功までの日数は短縮(中央値50日 vs. 33.5日,p=0.05),膵壊死の入院期間が短縮(中央値23日 vs. 15日,p=0.04)したことが報告されている 2).Gambittaらによる単施設の膵周囲液体貯留91例の解析で,初期36例(PSで治療)よりその後の55例(PS,ネクロセクトミー症例では金属ステントで治療)のほうが,治療成功率が高く(56% vs. 96%,p=0.049),治療関連偶発症が少なく(11% vs. 1.8%,p=0.040),追加手術の必要性が低くなった(33% vs. 11%,p=0.030)ことが報告されている 3).これらはいずれも,膵周囲液体貯留に対するEUS下治療におけるラーニングカーブ効果を示唆する結果である.しかし,いずれも限定された施設からの少数例の報告であり,発表年代を考慮すると現在の臨床状況に外挿できるとはいえないため,最新のデータに基づいたエビデンスの蓄積が望まれる.
病院要件に関しては,Facciorussoらによる30施設のLAMSで治療された膵周囲液体貯留516例の解析では,施設での経験症例数15例を区切りに治療関連偶発症が減少する可能性について報告されている 4).本邦のDiagnosis Procedure Combination(DPC)データベース内の486施設のLAMSあるいはPSで治療された膵周囲液体貯留4,053例の解析では,年間治療症例数の多い施設において,院内死亡率・出血率・長期入院率・医療コストが低くなる可能性について示唆された(すべてp<0.001)が,年間治療症例数のカットオフ値は明確なものがなかった 5).WON患者の搬送基準を定義するために,特にLAMSによる治療を受けたWON症例に絞った術者・病院要件に関するエビデンスの蓄積が望まれる 6).
BQ5:内視鏡的ネクロセクトミーの方法は?
ステートメント:経消化管的あるいは経皮的経路を介して直接内視鏡をWON内腔へ挿入し,種々のデバイスを用いて壊死物質の除去を行う.
解説:
内視鏡的ネクロセクトミー(endoscopic necrosectomy:EN)は,経皮的あるいは経消化管的にWONに対しドレナージを行い,この経路を介して直接内視鏡をWON内腔へ挿入し,種々のデバイスを用いて壊死物質を除去する方法で,2000年にSeifertらによって初めて報告された 1).EN手技は,先行するドレナージに使用するステントが,PSかLAMSかで異なる.前者では,瘻孔部を12~20 mm径のバルーンカテーテルで拡張した後,内視鏡をWON内腔へ挿入する.一方,後者では,ステントの口径が大きいため,瘻孔部を拡張することなく内視鏡の挿入が可能である.なお,一期的に施行する場合にはLAMSをバルーンで拡張する必要がある.EN中においては,致死的な偶発症である空気塞栓症が報告されており,CO2送気下で行うことが強く推奨されている 2),3).ENの回数や手技時間は,病変の大きさや,患者背景に応じて決定されるべきであるが,週に1〜4回,1回の施行時間は1時間以内を目安とする報告が多い 4),5).また,殺菌や止血,創傷治癒,洗浄効果を有する過酸化水素水(H2O2)送水下でのENの報告もなされている 6).MessallamらによるH2O2下でのEN群(H2O2群)122例とコントロール群(H2O2を使用しないEN群)82例を後方視的に比較した検討 7)では,臨床的奏効率およびWON縮小までの期間中央値は,EN群で78.9%,76日であったのに対し,H2O2群では93.8%,38日と優位にH2O2群で良好であったと報告しており,H2O2が有用である可能性がある.Bangらも,壊死物質を除去した後,WON内腔へ経鼻的ドレナージチューブを留置し,H2O2を混ぜた生理食塩水を灌流させることを提唱している 8),9).壊死物質除去には,様々なデバイスが用いられているが,本邦からの多施設後方視的研究では 4),五脚鉗子や鰐口鉗子が最も多く使用されており,ついでポリペクトミースネアや生検鉗子などが使用されており,EN専用のデバイスが長らく存在しなかった.一方,近年海外からENに関する新規専用デバイスの報告がなされるようになった 10),11).Stassenらは,自動回転式刃による組織切断後,同時に組織吸引が可能なEndoRotorTMを用いたENの治療成績を報告している 10).30例のうち,半数が1回のセッションのみで完全に壊死物質除去に成功しており,全体の平均セッション回数も,中央値1.5回と少ない回数で可能であったとしている.加えてデバイス関連の偶発症は1例も認めず,安全で効果的なデバイスであると報告している.Brandらは,直径14mmの把持機能を有する透明なプラスチック製キャップ(XcavatorTM)を内視鏡先端に装着し,ENを行った初期成績を報告している 12).以上のように,近年有望なデバイスがいくつか報告されてきており,既存のデバイスとの比較試験による検討が待たれる.
BQ6:内視鏡的ネクロセクトミーにはどのような有害事象があるか?
ステートメント:有害事象の頻度は27.3~36%で,出血が最も多く,その他膵液瘻,穿孔,空気塞栓が挙げられ,致命率は4.4〜6%と報告されている.
解説:
内視鏡的ネクロセクトミー(endoscopic necrosectomy:EN)における関連有害事象の頻度は,14編の後方視的研究を含むシステマティックレビュー 1)によると36%,37編633例を含むアジアのコンセンサスステートメント 2)では,27.3%と報告されている.また,これらの有害事象による致命率は,前者で6%,後者で4.4%と報告されており,決して安全な治療手技とはいえない.出血(12.6%)は,最も頻度の高い有害事象とされており,ついで膵液瘻(5%),穿孔(4.4%),空気塞栓(0.8%)などが報告されている 1).本邦からの多施設後方視的研究でも 3),術中有害事象としては出血が最も多く,ついで穿孔,空気塞栓が認められている.なお,EN後の有害事象としては,脾動脈瘤破裂や,マロリーワイス症候群,誤嚥性肺炎などが認められている.出血はEN中に生じる場合と,待機中に生じる場合に分けて検討すべきである.EN中の出血に対しては,クリップやアルゴンプラズマ凝固療法(argon plasma coagulation:APC),高周波焼灼術,エピネフリンの局所注射などが施行される 4).近年では,自己組織化ペプチド 5)や,止血パウダー 6)を用いた手法の報告もされており,今後の止血成績が待たれる.一方,待機中に出血を認めた場合は,WON内腔に凝血塊が貯留し,視野確保が困難であることが多く,特に動脈瘤破裂に起因する場合は致命的である.そのため,造影CTによる動脈瘤の確認を適宜行うべきである 2).空気塞栓は致命的であるため,CO2送気下でのENが強く推奨されるが,CO2送気下でも致命的な塞栓症を来した報告 7)が存在するため,過度の送気や手技時間が超過しないよう注意が必要である.穿孔の多くはEN中に生じるWON壁の損傷に起因することが多く,慎重な手技の遂行が求められる.ENに関する有害事象には,動脈瘤破裂など内視鏡的に対応困難な場合もあるため,緊急手術やIVR治療による対応が可能な施設で行うべきである.
CQ16:初回内視鏡的経消化管ドレナージ直後の一期的ネクロセクトミーは推奨されるか?
ステートメント:十分に被包化され,壊死物質が多い症例に対して,全身状態が安定している場合には一期的ネクロセクトミーを行うことは許容される.
修正Delphi法による評価:中央値8,最低値7,最高値9
推奨の強さ:2,エビデンスレベル:C
解説:
現在の標準的な治療アプローチであるステップアップ・アプローチ 1)では,症候性WONに対する内視鏡的経消化管ドレナージ後に臨床的に改善を認めない場合に内視鏡的ネクロセクトミーなどの次のステップとしての治療が行われてきた.これは壊死性膵炎の急性期に外科的ネクロセクトミーなどの高侵襲治療を行うことが重篤な偶発症や死亡の増加につながる可能性があること,またドレナージのみで改善した症例を35%に認めたことから,ドレナージ後に改善がみられない症例でのみ二期的にネクロセクトミーを行うステップアップ・アプローチが選択されてきた.しかしドレナージ後の臨床的改善を判断する時期については一定の見解がなく,2017年に発表された多施設アンケート調査 2)では,86.4%の内視鏡医が初回ドレナージ時にはネクロセクトミーを行わないと回答していた一方で,ステップアップとしてのネクロセクトミーを行うかどうかを判断するまでの待機期間についての回答では,3日から3週間と施設間で大きな違いがあることが報告されている.ドレナージのみでWONが改善する症例がある一方で,壊死物質が多い症例,病変が大きく,広範に進展している症例ではネクロセクトミーが必要となるリスクであることも報告されている 3),4).このようなネクロセクトミーが必要となる可能性が高い症例では,初回ドレナージ施行時に一期的に内視鏡的ネクロセクトミーを行うことで治療期間・入院期間の短縮など治療成績が向上する可能性がある.さらに近年のLAMSの導入により,PSと比較してWON内への内視鏡挿入が容易となったこともあり,一期的ネクロセクトミーの報告も増えている.一期的ネクロセクトミーと二期的ネクロセクトミーの比較については,これまでに1編のRCT 5)と2編の後方視的研究 6),7)の計3編の論文(Table 7)が報告され,いずれの研究もLAMS留置例が対象となっている.271例の多施設後ろ向き研究 6)では,25%で一期的ネクロセクトミーが行われており,一期的・二期的ネクロセクトミーではそれぞれ処置関連偶発症は6%・13%,臨床的成功は91%・86%と有意な違いは認めず,ネクロセクトミー回数は3.1回・3.9回と一期的ネクロセクトミーで有意に少ないという結果であった.ただし一期的ネクロセクトミーでは4%でLAMSの逸脱を合併したとされている.これに対して80例の単施設後ろ向き研究 7)では,一期的ネクロセクトミーは二期的ネクロセクトミーと比較して,有意にネクロセクトミー回数が多く(2.5回・1.5回),入院期間が長い(7.5日 vs. 3.0日)という異なる結果が報告されている.2023年に報告されたRCT 8)では,全体の症例数が70例と少数ではあるものの,一期的・二期的ネクロセクトミーの臨床的成功率は100%・94%,偶発症は11%・24%であり,再インターベンション回数は1回・2回と少なく,入院期間も9日・19日と短いことから,十分に被包化されたWONで,全身状態が安定した症例では一期的ネクロセクトミーを考慮してもよいと結論付けられている.しかしこれまでの報告の結果は一貫しておらず,対象となるWONの壊死物質割合や進展範囲の状況の違いなどが結果に影響している可能性が考えられる.ただしいずれの報告においても偶発症は有意には増えていないことから,十分に被包化され全身状態が安定している症例においては一期的ネクロセクトミーは許容されるといえる.本邦においてもWONに対する一期的ネクロセクトミーとステップアップ・アプローチのRCT 8)が行われるなど,複数の臨床研究が行われており,今後その結果が待たれる.

WONに対する一期的ネクロセクトミーと二期的ネクロセクトミーの比較.
CQ17:WONの治療過程にERPは必要か?
ステートメント:DPDSの診断治療のために必要と判断される症例にのみ行うことを提案する.
修正Delphi法による評価:中央値9,最低値7,最高値9
推奨の強さ:2,エビデンスレベル:C
解説:
WONの治療過程における内視鏡的逆行性膵管造影(endoscopic retrograde pancreatography:ERP)の役割は,急性壊死性膵炎の重要な偶発症であるDPDSの診断と治療である.DPDSは主膵管または隣接する膵実質の壊死により膵管破綻が生じ,尾側の膵臓から消化管に流出できない膵液が分泌され続け,様々な症状を引き起こす病態であり 1)~3),PFCの再発 4)や糖尿病の発症 5),6)と関連している可能性がある病態である.DPDSの診断には膵管破綻の診断が必須となり,画像診断基準として:(a) 2cmを超える膵壊死領域,(b) 壊死領域上流(尾側)の血流のある膵組織,(c) 膵管造影における造影剤の漏出,(d) 膵管造影におけるPFCへの主膵管からの交通,が挙げられるが,このうち(c)(d)は,ERPでしか評価ができない 7).ERPは膵管造影にて主膵管の完全または部分的な破綻,造影剤の膵管外漏出を評価することができる.ERPとMRCPによる膵管評価を連続的に受けた87人のWON症例を対象とした後ろ向き研究では,膵管破綻はERPで60.9%,MRCPで82.8%に確認され,ERPで70.1%,MRCPで39.1%の膵管外漏出が認められており,MRCPに対するERPの利点が膵管外漏出の評価にあることを示している 8).一方で破綻部上流の主膵管を描出できないことと膵管外の情報が得られないことがERPの欠点となる.
DPDSに対する内視鏡的経乳頭的膵管ドレナージの臨床的有用性は,主膵管破綻の程度(部分的か完全か)によって異なる.主膵管が部分的に破綻している症例では,経乳頭的膵管ステント留置による橋渡し(ブリッジング)が可能であり,臨床的有用性をもたらす可能性がある.一方,主膵管が完全に破綻している症例では,破綻部位の上流にある膵管がERPで描出できないため,経乳頭的膵管ステント留置による橋渡しが可能であることは稀である.
ある後ろ向き研究では,経乳頭的膵管ステント留置による橋渡しにて主膵管の完全性が回復したのは,DPDS患者のわずか9.6%(3/31)であったが 5),別の報告では,主膵管が部分的または完全に破綻されたWONに対して経乳頭的膵管ステント留置術による橋渡しを行ったところ,73%(16/22例)で長期的な成功が得られていた.破綻長が短く,膵壊死を伴わない膵液漏を有する症例は,経乳頭的膵管ステント留置による橋渡しのよい適応である可能性がある.例えば,PFCが小さいDPDS症例やEUS下ドレナージ後に症状が再発したDPDS症例では,手術に移行する前に経乳頭的膵管ステント留置による橋渡しが治療の選択肢となりうる.橋渡しが行えず,破綻部の頭側主膵管のみに対する経乳頭的膵管ステント留置でもPFCが解消することがいくつか報告はされているため,経乳頭的膵管ステント留置のみで膵頭部の膵液流出を確保することも治療の選択肢となりうる 9)~12).
要約すると,WONの治療過程において,ERPはDPDSの診断治療のために必要と判断される症例においてのみ有用性がある.膵管造影における造影剤の漏出,PFCと主膵管の交通,を評価することはDPDSの診断に有用となり,経乳頭的膵管ステント留置による橋渡しは破綻長が短く,膵壊死を伴わない膵液漏を有するDPDS症例に対して有用になる可能性がある.
一方でERPによる膵管造影は侵襲的な手技であり,術後膵炎による膵壊死の二次感染,膵炎の増悪,出血,穿孔などの手技関連有害事象のリスクを伴うため,適応は慎重に検討すべきである.さらに,壊死性膵炎による十二指腸浮腫は,スコープの挿入が困難なため,ERPの技術的成功率を低下させる可能性がある 2).DPDSは早期の段階では臨床医に見過ごされることが多いが,WONに対する内視鏡的経消化管ドレナージ前に毎回ERPによる膵管評価を行うことは許容されにくい現状がある.
FRQ3:WON寛解後の画像検査による経過観察は有用か?
ステートメント:再発や長期ステント留置による偶発症の早期発見に有用である可能性がある.
解説:
WONの治療後の経過観察における画像評価の必要性,適切なモダリティ,および具体的なタイミングに関する研究は限られており,エビデンスが不足している.ESGEのガイドラインでは,定期的な画像評価よりも,症状や偶発症の徴候がみられた場合に画像検査を行うことが提案されている 1).造影CT検査は進行する局所偶発症の詳細な評価や治療方針の決定に有用とされている.
しかし,DPDSを合併したWONでは,経消化管的な治療が成功しても,PFCが高率に再発することが知られている 2),3).このようなDPDS症例では,瘻孔部へのPSの長期留置が,PFC再発を有意に予防する可能性がある 4),5).PFC治療後のPS留置の有無による再発リスクを比較したシステマティックレビューでは,DPDS症例に限ったサブ解析においても,PS留置群が非留置群より有意にPFC再発が少なかった(OR:0.14,95%CI:0.04~0.46,p=0.001) 6).また,DPDSを有する患者において,PS留置後6カ月以内のステント逸脱ではPFC再発率が100%であったのに対し,6カ月超えての逸脱では再発がなかったとの報告もある 7).さらに,PS抜去後も潜在的なDPDSが存在すれば,再発リスクが高い(OR:8.0,95%CI:1.2~381.8,p=0.04) 3).これらの知見から,DPDSが疑われる症例では,WON治療終了後3~6カ月にCTやMRIによる客観的評価を行い,PFCの再発をサーベイランスすることが提案される.
一方で,長期のPS留置によるステント関連偶発症にも注意が必要である.治療後PSを留置した116人を対象に平均80.6カ月観察した研究では,ステント関連偶発症が17例(100人あたり年間で2.18例)に認められた.主な偶発症はPSによる潰瘍やびらんによる疼痛(13例)で,保存的治療またはステント抜去で対応可能だったが,2例は潰瘍出血で内視鏡的止血術や血管塞栓術を要し,残り2例はステントによる大腸皮膚瘻を形成し外科的加療が必要であった 8).別の研究では,1年以上PS留置した36人を中央値56.2カ月観察し,3例(8.3%)が大腸穿孔(5.8カ月,17.1カ月,33.7カ月)を合併した.1例は外科手術,2例はステント抜去と保存的治療で改善した 9).これらの研究結果から,頻度は高くないものの外科的手術を要する偶発症を合併する危険性があるため,長期間の定期的な画像検査が必要であると考えられる.
現在のところ,治療終了後の経過観察法は明確に定義されていないが,DPDSに伴うPFCの再発や長期ステント留置による偶発症を早期に発見するためには,定期的な画像検査によるサーベイランスが提案される.経過観察の時期,期間,およびモダリティは,個々の患者の臨床経過に基づいて慎重に決定すべきであり,個別に設定することが望ましい.今後のデータの蓄積により,この問題に対する明確な回答が得られることを期待する.
BQ7:WON治療後の長期偶発症と予測因子は?
ステートメント:WON治療後は,慢性膵炎・膵内分泌機能障害・膵外分泌機能障害などの発生に留意した経過観察が必要である.DPDSは予後予測因子であり,慢性膵炎と糖尿病の発症に注意を要する.
解説:
WONの内視鏡治療後の長期経過観察例では,慢性膵炎,膵内分泌機能障害,膵外分泌機能障害などの発症が報告されている.Hollemansらによる2施設の保存治療・ドレナージのみによる治療・ネクロセクトミーを受けた壊死性急性膵炎373例の解析では 1),平均13.5年の経過観察期間中,慢性膵炎発症をドレナージのみによる治療を受けた症例の23%で,ネクロセクトミーを受けた症例の14%で認めた.膵内分泌機能障害をドレナージのみによる治療を受けた症例の33%で,ネクロセクトミーを受けた症例の62%で認めた.膵外分泌機能障害をドレナージのみによる治療を受けた症例の67%で,ネクロセクトミーを受けた症例の79%で認めた.その他,慢性疼痛 2),稀な有害事象として小腸閉塞など 3)の報告がある.WONの内視鏡治療後の膵癌発症に着目した臨床データはなく,合併した慢性膵炎や糖尿病それぞれの病態に応じた膵癌サーベイランスを推奨する.
それぞれの長期偶発症の予測因子についての報告は少なく,WON治療後のサーベイランスの個別化に向けたエビデンスの蓄積が望まれる.上述のHollemansらによる解析では 1),膵周囲に壊死を認める症例に対して膵壊死がある症例では,慢性膵炎(OR:2.2,95%CI:1.1~4.2),膵内分泌機能障害(OR:5.0,95%CI:3.0~8.2),膵外分泌機能障害(OR:3.9,95%CI:2.1~7.2)とも発症リスクが高かった.また,膵壊死の範囲が広いほど発症リスクが高かった.Bashaらによる単施設の大口径金属ステントによるドレナージを受けた213例の解析では 4),中央値2.5年の観察期間中,59例(28%)の糖尿病新規発症を認めた(発症までの期間中央値2年).その中で主膵管破綻症候群がある症例はない症例に対して糖尿病新規発症が高頻度であった(31% vs. 17%,OR:2.29,95%CI:1.04~5.05).同様に,Timmerhuisらによる27施設の保存治療・侵襲的治療を受けた壊死性急性膵炎896例の解析では 5),中央値6.3年の経過観察期間中,主膵管破綻症候群がある場合,慢性膵炎(OR:2.73,95%CI:1.47~5.15),膵内分泌機能障害(OR:1.63,95%CI:1.05~2.53)の発症率が高かった.一方,膵外分泌機能障害の発症率に有意な上昇は認めなかった(OR:1.35,95%CI:0.85~2.15).Bartholdyらによる単施設のEUS下ドレナージとネクロセクトミーを受けたWON 125例の解析では 6),中央値4.3年の経過観察期間中,急性膵炎のCT重症度インデックス 7)が高いほど膵内分泌機能障害の発症率が高く(OR:1.59,95%CI:1.22~2.06),ネクロセクトミーや内視鏡的逆行性膵管造影を要した症例では膵外分泌機能障害の発症率が高かった(それぞれ,OR:1.28,95%CI:1.05~1.56,OR:10.1,95%CI:2.86~35.6).