抄録
患者は46歳の男性で,昭和49年4月以来,紅斑を伴う結節性の皮疹が多発し,軽快・増悪を繰り返すため,昭和51年11月当院皮膚科を受診した.皮疹の生検にて壊死性血管炎のperiarteritis nodosaと診断され,ステロイド剤の投与を受けていたが,内服開始1週間後に急に激しい心窩部痛が出現したため当科に入院した. 内視鏡検査では,胃体部の小彎から前壁にわたる広い範囲に多発した偽膜様白苔と凝血を伴う不整地図状の潰瘍性病変を,また,後壁には同様の潰瘍性病変が長い2条の広狭不整な帯状潰瘍を形成して体部小彎側から前庭部大彎側に拡がっているのを認めた.レ線検査にても同様の所見を認めた.胃生検では,粘膜部は強い炎症所見を呈し,白苔部には多数のカンジダが認められた.血管造影では,典型的な動脈の閉塞像や動脈瘤は認められなかった.約2カ月後には胃病変はステロイド剤の漸減・維持療法と一般的な潰瘍治療法にて線状の潰瘍瘢痕を残してすべて治癒した. 本症例の多彩な病像を呈した胃病変は,periarteritis nodosaの胃血管病変に基づく胃壁の虚血状態をベースにして発症し,ステロイド剤投与による全身的および胃の局所的な抵抗減弱とさらにカンジダ浸淫による修飾が加わり生じたものと考えた.