抄録
患者58歳の女性,全身倦怠感,悪心,嘔吐を訴えて受診.上部消化管X線検査および内視鏡検査で,胃体下部大轡に山田IV型ポリープ(30×27mm)を認めた.2回の生検では悪性所見を認めなかったが,X線所見および内視鏡所見よりI型早期胃癌を疑い,完全生検を目的として内視鏡的ポリペクトミーをおこなった.術直後にはまったく出血がみられず,その後も出血を思わせる徴候はなかった.術後5日目の内視鏡検査中に大量出血をきたし,緊急手術がおこなわれた. 内視鏡的ポリペクトミーにあたっては,適応を慎重に決定することはもちろんであるが,術後早期の内視鏡検査は出血の誘因となり得るので,慎重であるべきである. なお,切除標本の組織検査の結果は深達度smの1型早期胃癌で,No.4のリンパ節に転移を認めた.