抄録
岡山大学第一内科で昭和33年5月より54年3月までに腹腔鏡検査を施行した2,646例中,主要偶発症は15例(0.57%)であり,気腹針,套管針刺入障害5例,腹腔内出血5例,その他5例であった.気腹針刺入障害例中,腸管穿刺例は2例で腹部手術既往例であった.いずれも内科的処理で治癒しえた.腹腔内出血例は肝・脾生検に起因する出血であり,全例内科的処置で軽快したが,検査前の出血・凝固に関する諸検査が重要である.閉塞性黄疽患者の肝生検後,レイウス病状をきたし外科的手術を施行したものが1例あった.高度の食道静脈瘤患者の1例に腹腔鏡検査後,吐血をきたし外科的処置を行った症例があった.検査時間を短く,疼痛による怒責などで腹腔内圧を高めないように注意する必要がある.心疾患合併例の腹腔鏡検査例中特に偶発症はなかったが,検査前の十分な治療と,検査中厳重な観察と注意が必要であり,特に短時間に疼痛を与えず終了することが大切である.