1980 年 22 巻 11 号 p. 1552-1561
拡大ファイバースコープを使用し,大腸隆起性病変を拡大観察すると,種々の模様像がみられる. さらに普通観察では全く正常と思われる粘膜面にも正常腺口像とは明らかに異なる異常腺口模様像がみられることがある.これらの異常腺口模様像は非常に微小なために組織診断を得るのが困難である. 一方大腸固定標本を実体顕微鏡的に拡大観察してみると,生体の場合と良く似た微小異常腺口模様像がみられ,病理組織学的検索の結果,腺腫や過形成性ポリープと診断された. そこで正常例(行政解剖例)と大腸癌切除例に実体顕微鏡的に拡大観察を行い,特に腺腫について検討した.その結果,1mm以下の微小腺腫にも種々の異型性がみられ,その表面の拡大像にもいろいろのパターンがみられることがわかり,これらの微小腺腫の異常腺口模様がパターン分類されれば,生体の拡大観察で微小腺腫が同定でき,腺腫の発生・発育が観察できることが示唆された.