抄録
胃結核は稀な疾患で,本邦報告例は百余例を数えるに過ぎない.診断が困難なことより,胃癌,胃潰瘍,粘膜下腫瘍などの診断のもとに手術されて初めて診断を得ることが多い.直視下生検の進歩にもかかわらず,生検によって確診を得たものは数例に過ぎない.治療も,ほとんどの場合,胃切除が行なわれており,内科的にのみ治療されたものは,著者らの調べ得た限りでは,2例に過ぎない.著者らは,全身性結核症の患者の噴門部に潰瘍を認めたため,当初から胃結核症を疑がい直視下生検によって,病理組織学的に,結核性潰瘍の確診を得た症例を経験した.治療はKM,INAH,EBなどの内科的治療を行ない,内視鏡的に,治療開始2か月後には,潰瘍の縮少を認め,3か月後には,潰瘍は,S1 stageの胃潰瘍瘢痕像としてみられた.以後2年間の経過観察を行なったが,再発をみていない.著者らは,内視鏡的経過を示すとともに,若干の文献的考察を加え報告した.