抄録
食道内視鏡下にトルイジンブルーならびにヨードを用いた二重染色法を新たに試みた.本法により食道粘膜面が青色,褐色,黄白色の3区域にわかれることを知り,それぞれの染色域の意味を検討した結果,褐色域は正常食道粘膜を,青染域は正常粘膜の欠損域を,黄白色域(不染帯)は病的上皮の存在領域であることを知った.特に不染帯は診断価値の高い所見である.食道癌にみられる不染帯は4型に分類でき,このうちの広範囲型と呼ぶものの85%は上皮癌であった.切除標本との対比から,上皮内癌の正診率は63%であり,残る37%は一部で粘膜固有層への浸潤がみとめられた粘膜内癌であった. 良性食道ビラン59例の険討で,ビランは二重染色所見に従い3型に分類でき,組織学的食道炎所見と良く一致した.また9例の経過追跡の結果から,ビランの二重染色型は一定の変化様式を示し,これらの結果から食道ビランは,二重染色型で示される.活動期型→再生期型→治癒期型という経過をたどることが判明した. これらの成績にもとづき,食道の内視鏡的二重染色法は,上皮内癌,ビラン性食道炎の内視鏡診断に有用な補助診断法と考えられた.