日本消化器内視鏡学会雑誌
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胃潰瘍患者における胃血行動態
宮本 二郎高瀬 靖広竹島 徹中原 朗川北 勲山形 迪小山 捷平武藤 弘福富 久之崎田 隆夫
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1981 年 23 巻 6 号 p. 781-791

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抄録

胃潰瘍の発生に攻撃因子と防御因子との不均衡が強調され,最近においては胃粘膜防御の減弱機序が明らかにされ,ことに微小循環動態の変化と水素イオン逆透過性亢進が胃潰瘍の成因として重要であることが認識されだした.今回は胃潰瘍患者35例と正常コントロール群27例について,前庭部,体上部の血流量と潰瘍については中心部,潰瘍辺縁部および周辺正常粘膜部血流量を内視鏡的水素クリアランス式血流測定法を用いてそれぞれ測定した.そして以下の結論を得た.(1)正常者群,胃潰瘍患者群とも胃体部血流量が前庭部血流量より有意に多かった.しかし正常者群と潰瘍群との比較では差はみられなかった.(2)50歳を越えると血流量が減少する傾向がみられた.(3)周辺正常粘膜と潰瘍辺縁の血流量を比較すると,活動期潰瘍では辺縁の血流低下,治癒期潰瘍では周辺より血流の多い態度がみられた.潰瘍中心部はいずれの時期でも血流は周辺部より少なかった.(4)同一症例で潰瘍辺縁の血流量をstage毎に測定すると,治癒機転が働くにつれて血流は増加傾向を示した.(5)難治性ないし頻回に再発をくり返す潰瘍では,辺縁血流の低下が何らかの因果関係を持つと予想される症例が7例中6例あった.

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