抄録
切除不能膵癌21例に対しβ線術中照射を施行した結果,上部消化管の照射後障害を5例に経験した. それらの照射後障害は胃潰瘍形成2例,十二指腸球部潰瘍形成1例,球後部の高度な狭窄を伴なった潰瘍形成2例であった.これらの照射性潰瘍の内視鏡像の特徴は,灰白色帯に被われた,辺縁のかっちりした打ち抜き型潰瘍であった. 照射より狭窄や潰瘍形成に至る迄の期間は,胃では半月以内であったが,十二指腸では1.5ヵ月,10ヵ月,13ヵ月であった. かかる術中照射後上部消化管障害は,きわめて難治性であり,保存的療法に対して全く治療効果はみられなかった.