抄録
最近,抗生物質投与後に,細菌性赤痢に類似した血性下痢を起す症例が注目されている.著者らは最近2年間に抗生物質投与後に発現した血便症例を14例経験したので,その臨床症状,内視鏡所見を中心に検討した.その結果・性別頻度は女性に多くみられ,すべての年齢層に発症した.血便は抗生物質,とくにABPC投与後平均7日目に出現し,血便の回数は1日10回以上が多く,抗生物質の投与を中止し,対症療法のみで症状は平均6日後に改善した・血便が出現した時期に施行した大腸内視鏡検査の所見は,主として下行結腸からS状結腸にみられた発赤・浮腫・びらんなどの所見が特徴的で,潰瘍・偽膜形成はみられなかった.これらの所見は血便消失後比較的短期間で改善した.糞便の細菌学的検査でKlebsiella oxytocaが半数以上の症例で検出された.