抄録
腫瘍の最大径が3cm以下のものを小膵癌と定義した.昭和40年2月から56年4月迄に私どもの経験した小膵癌は7例である.これら小膵癌の占居部位はいずれも頭部で,主訴は黄疸であった.このうち6例に膵管像が得られ,4例は狭窄型,2例は閉塞型であった.しかし,小膵癌と進行癌の膵管像の差異はほとんどなく,ただその範囲が狭いだけであった.5例に膵頭十二指腸切除,2例に膵全摘を行った.切除標本の検討ではいずれもリンパ節転移,十二指腸浸潤あるいは後腹膜脂肪織内浸潤が認められ,早期膵癌とはいえなかった.ERCPにて小膵癌の診断は概ね可能であるが,他の検査法と総合しても良悪性の鑑別のっかぬ場合は,false positiveをおそれず積極的に開腹してゆくのが現時点では望ましい.小膵癌診断率向上のためには,ERCPに至るまでの有効なスクリーニング法の確立が必須である.