抄録
雑種成犬3頭を対象とし、内視鏡的コンゴーレッド試験を用いて,di-butyryl cyclic AMPの局所投与により胃酸分泌が起るかどうかを検討した.3%重曹水による胃内洗滌に引き続いて0.3%コンゴーレッド液を塗布後,内視鏡用局所注射針を用いてdi-butyryl cyclic AMP50mg/ml液0.3mklを胃体部小彎に局所注射し、約10分後に注射部位近傍より変色が始まり,次第に変色域が広がることが観察された.しかし胃体部全体に広がることはなかった.あらかじめatropine sulfate0.5mg/kg筋注投与しておいた場合,またcimetidine6mg/kg静注投与しそおいた場合でも同様の変色が認められた.生理的食塩水,蒸溜水,20%ブドウ糖液,di-butyryl cyclicGMP50mg/ml液を各0.3m1局所注射した場合は,いずれも変色がみられなかった.すなわち外因性のcyclic AMPにより胃酸分泌が起ることが内視鏡下に観察された.このことはcyclic AMPがsecond messengerとして壁細胞の酸分泌に関与していることを示唆するものと考えられる.