日本消化器内視鏡学会雑誌
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腹腔鏡検査が診断に有用であった肝結核の1症例
小野 稔関谷 千尋矢崎 康幸高橋 篤梶 巌上原 聡並木 正義
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1982 年 24 巻 8 号 p. 1262-1269_1

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抄録

患者は38歳男性で上腹部痛と発熱を主訴として受診した.肝機能検査成績でGOT,GPT,の軽度上昇とALP,γ-GTP,LAPの上昇を認めたが,ERCP,肝シンチグラム,腹部CTスキャンなどでは異常所見はみられなかった.しかし,腹腔鏡検査で肝左右両葉,腹膜および大腸の漿膜面に径2~3mmの黄白色円形小結節が認められ,その肝生検組織からLanghans巨細胞と乾酪壊死を伴う結核結節が証明された.また胸部X線検査でも右上肺野に微細な石灰化を伴う陰影が認められた.INH,SM,EBによる三者併用療法を開始したところ,発熱,上腹部痛は消失し,赤沈,CRPも正常化し,ALP,γ-GTP,LAPも著明に改善した.治療開始後4カ月で再び腹腔鏡検査を行ったところ,前回みられた黄白色の結節は小白斑に変化し,周囲の毛細血管も消退していた.本症例は従来報告されてきた肝結核に比較すると比較的早期,かつ軽症であるが,腹腔鏡検査の普及により今後こうした症例に遭遇する機会も増えると思われるし,この患者のような臨床症状をみたなら肝結核をも念頭において腹腔鏡検査を施行することが必要であると考え報告した.

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