日本消化器内視鏡学会雑誌
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隆起型胃潰瘍瘢痕の長期経過観察例
中西 徹大森 美和坂田 泰昭
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1983 年 25 巻 1 号 p. 108-111_1

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抄録

 胃幽門前庭部の急性対称性潰瘍は特異な像を呈しIIc型早期癌との鑑別を要する.更に稀であるが潰瘍瘢痕が隆起を呈することがありこの場合IIa型早期癌との鑑別診断も必要となってくる.われわれは今回急性胃幽門前庭部対称性潰瘍の経過中に隆起型潰瘍瘢痕を呈し長期残存した症例を経験したので報告する. 患者は35歳の男性で腹痛,悪心,嘔吐を訴え当科受診し,上部消化管透視で胃前庭部に不整形潰瘍と著明な粘膜ヒダ集中を認めた.内視鏡検査では幽門前庭部の前後壁に対称性に潰瘍を認め生検施行したが悪性所見はなかった.1カ月加療後内視鏡再検すると前後壁の潰瘍はともに著明な粘膜ヒダ集中とその中央部にIIa様隆起を認めた.その後の経過で後壁病変は通常の瘢痕となったが前壁病変はIIa様隆起が残存し,発症後約8カ月後も不変という極めて稀な経過を示した.この前後壁の病変の経過の差異の原因は不明である.

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© 社団法人日本消化器内視鏡学会
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