1983 年 25 巻 10 号 p. 1542-1545
純膵液採取によるprotein plugの排出により腹痛の軽快した慢性膵炎の症例を経験した.患者は57歳の男性で飲酒歴はない.昭和54年4月,胆嚢結石のため,胆嚢切除をうけ,さらに同年9月に内視鏡的乳頭切開術をうけたが,その後も心窩部痛が持続し受診した.血清,尿アミラーゼの異常はなく,またPSテストでは重炭酸濃度のみが低下傾向を示したが明らかな異常はみられなかった.ERCPでは,中等度異常の慢性膵炎と判定され,さらに膵管内にprotein plugを示唆する透亮像をみとめた.純膵液採取を試みたところ採液中に多数のprotein plugが観察されたが,純膵液の分析では液量,アミラーゼ,重炭酸濃度に明らかな低下はなく,蛋白,lactoferrin濃度も正常であった.採液後患者を悩ませていた腹痛は消失した.純膵液採取が診断法としてのみならず,治療的手段としても有用である可能性があるとおもわれ報告した.