1983 年 25 巻 11 号 p. 1720-1726_1
台湾に生まれ,鹿児島・佐世保にて育った38歳の男性.下痢を主症状として発病し,細菌性赤痢の治療のため入院した.抗生剤の投与にもかかわらず,下痢は持続した.貧血は認められなかったが,入院時すでに白血球数は,47,500/mm3と増加し,白血球分類では,分葉化した核をもつ異常な(白血病性の)T細胞が,46%にみられた.この症例の特徴は,消化管とくに大腸粘膜の白血病性病変である.すなわち,X線所見では,大腸粘膜の浮腫状の腫張と,周堤を伴った,いわゆる《タコイボ》状のびらんがみられ,大腸内視鏡所見では,不透明な粘膜に,びらんと偽ポリープが混在し,大腸生検により,ATL細胞の大腸粘膜内への浸潤が確かめられた.