日本消化器内視鏡学会雑誌
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十二指腸粘膜の鉄吸収機序に関する実験的・臨床的研究
平田 一郎
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1983 年 25 巻 8 号 p. 1159-1169

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抄録

十二指腸粘膜における鉄吸収機序を検討するため,ラット十二指腸粘膜およびヒト十二指腸直視下生検材料の実体顕微鏡による観察,また組織所見から吸収鉄,トランスフェリン,フェリチンの局在を検討した.その結果,鉄投与の十二指腸粘膜実体顕微鏡所見は腸絨毛内に存在する吸収鉄の組織所見をよく反映し,十二指腸粘膜の鉄吸収能を知るうえで有用であった.鉄欠乏性貧血では鉄投与前,トランスフェリンが吸収上皮,間質,細血管内に著明に認められたことから,腸上皮は速やかに鉄を吸収しうる状態にあること,また,鉄投与後経時的に鉄およびトランスフェリンの局在を調べた結果,鉄の吸収には二相性があることが推測された.更に,十二指腸粘膜における鉄とトランスフェリンの局在がほぼ一致したなどの成績から,十二指腸粘膜における鉄吸収には,十二指腸粘膜内のトランスフェリンが密接に関与していること,すなわち,吸収鉄が吸収上皮を経て血中へ移送される経路において,トランスフェリンが鉄の担体として,鉄吸収に促進的役割を果していることが示唆された.なお,フェリチンの鉄吸収に占める意義は,その局在部位からみて,比較的少ないものと解釈された.

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