胃・十二指腸潰瘍の術後合併症としての,胃,空腸,結腸瘻は,本邦では稀とされている.最近,われわれは,十二指腸潰瘍術後11年を経過して発症した胃,空腸,横行結腸瘻例を経験した.症例は,53歳の男性で,下痢,腹痛,糞臭ある曖気を主訴として来院.著明な痩せと,低蛋白血症,低アルブミン血症を認めた.血漿ガストリンは10pg/ml以下と低値を呈し,空腹時血漿セクレチンは445pg/mlと高値を呈し,テトラガストリン(4μg/kg,B.W.i.m.)投与で胃酸のpeak acidityは,82mEq/lとむしろ低値であった.注腸造影により,横行結腸から続いて直接,残胃,空腸が造影され,上部消化管内視鏡検査で,胃,空腸吻合部に,潰瘍と,吻合部近傍に大腸への瘻孔を認めた.凍結血漿の投与,中心静脈栄養を施行し,栄養状態改善後,手術を施行した.前回の手術は,BillrothII法で,%胃切除がおこなわれており,吻合部と横行結腸が癒着し,その部に示指頭大の瘻孔を認めたため,瘻孔部を切除し,colo-colostomy, jejuno-jejunostomy, gastro-jejunostomyをおこなった.術後,テトラガストリンに対する胃液のpeak acidityは20mEq/lと十分な減酸が認められたが,術後4カ月の内視鏡検査で吻合部空腸側に潰瘍の再発を認め,現在も薬剤による治療をおこなっている.
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