抄録
食道静脈瘤170症例を食道静脈瘤内視鏡所見記載基準に基づいて臨床的評価を行い,27剖検食道で組織学的検討を行なった.食道静脈瘤破綻は,内視鏡所見で形態(Form)および占居部位(Location)の高度変化症例に頻度が高く,Red-Color sign(R-C signと略す)陽性例で特に高くみられた.F1症例は出血の危険性が少なく,内視鏡的な経時的経過観察が大切である.F2以上でR-C sign陽性例に出血が高頻度に見られた.組織学的検討では,静脈瘤形成の主体は粘膜下層の静脈瘤であり,Formが高度になる程静脈瘤の重積も高度となり,静脈瘤の占める断面積も広くなっていた.Cherry Red Spot(C.R.S.と略す)およびRed Wale Marking(R.W.M.と略す)は粘膜固有層に重積した静脈瘤のうち,上皮を圧排菲薄化した静脈瘤であり,両者の差異は血管走行の違いであった.Diffuse Redness(D.R.と略す)は上皮直下の網目状の静脈叢およびそこから上皮内へ垂直に拡張蛇行して走行する上皮乳頭内毛細血管に血流量が増した時に見られると推察された.R-C signはFormが高度になる程,出現頻度は高く,破綻出血準備状態とも言える病理組織所見を呈し,出血を予知する内視鏡所見であることを明らかにした.