日本消化器内視鏡学会雑誌
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26 巻, 4 号
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  • 向坂 健男
    1984 年 26 巻 4 号 p. 479-491
    発行日: 1984/04/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    食道静脈瘤170症例を食道静脈瘤内視鏡所見記載基準に基づいて臨床的評価を行い,27剖検食道で組織学的検討を行なった.食道静脈瘤破綻は,内視鏡所見で形態(Form)および占居部位(Location)の高度変化症例に頻度が高く,Red-Color sign(R-C signと略す)陽性例で特に高くみられた.F1症例は出血の危険性が少なく,内視鏡的な経時的経過観察が大切である.F2以上でR-C sign陽性例に出血が高頻度に見られた.組織学的検討では,静脈瘤形成の主体は粘膜下層の静脈瘤であり,Formが高度になる程静脈瘤の重積も高度となり,静脈瘤の占める断面積も広くなっていた.Cherry Red Spot(C.R.S.と略す)およびRed Wale Marking(R.W.M.と略す)は粘膜固有層に重積した静脈瘤のうち,上皮を圧排菲薄化した静脈瘤であり,両者の差異は血管走行の違いであった.Diffuse Redness(D.R.と略す)は上皮直下の網目状の静脈叢およびそこから上皮内へ垂直に拡張蛇行して走行する上皮乳頭内毛細血管に血流量が増した時に見られると推察された.R-C signはFormが高度になる程,出現頻度は高く,破綻出血準備状態とも言える病理組織所見を呈し,出血を予知する内視鏡所見であることを明らかにした.
  • 平山 洋二, 丹羽 寛文, 赤塚 宣治, 三木 一正, 木村 正儀, 張 景明, 永井 正俊, 黄 士哲
    1984 年 26 巻 4 号 p. 492-502_1
    発行日: 1984/04/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    ラットを用い,水浸拘束による潰瘍性胃病変発生過程を内視鏡的に観察した.同時に電解式組織血流計を用い,経口的に電極を胃内へ挿入,ストレス負荷時の胃粘膜血流変動を測定した.さらに血管拡張剤であるニフェジピンを経口投与し,ストレス負荷時に胃粘膜血流を維持する試みを行い,血流の変動と潰瘍係数の相関について検討した.また,Shay ratを作成し,水浸拘束あるいはニフェジピン投与の胃分泌におよぼす影響を検討した. 水浸拘束時の胃粘膜血流減少はニフェジピン投与により抑制され,血流の保たれたもの程潰瘍性病変の発生は少なく,また病変が発生してもその時点で血流を改善させると,それ以後の病変発生が抑えられた.血流の減少およびその際の胃病変の発生状況に胃分泌は関係しないという結果が得られ,ストレス潰瘍の発生は攻撃因子の増強よりも,むしろ粘膜血流減少という防御因子の低下が主要因となっていることが明らかとなった.
  • 五十嵐 正広, 広門 一孝, 大井田 正人, 勝又 伴栄, 岡部 治弥, 比企 能樹, 中 英男
    1984 年 26 巻 4 号 p. 503-513
    発行日: 1984/04/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    大腸早期癌の内視鏡診断における拡大観察の意義について,通常観察および注腸造影検査との比較により検討した.その結果,1)注腸造影検査における早期癌の存在診断は83%であった.一方,性状診断については,疑診例を含めても38%と低く,良性ポリープとの鑑別が困難であった.2)通常観察に生検を加えた場合の診断率は,m癌50%,sm癌67%であった.一方,拡大観察と生検を加えた場合では,m癌63%,特にsm癌は100%の診断率であった.3)拡大観察が最も有効であった病変の特徴は,無茎性ないし亜有茎性病変で大きさは10mm前後の比較的小さな病変の診断率が高かった.4)m癌は,拡大観察を行っても37%false negativeがあり,特に有茎性病変で15mm以上のものについては,診断が困難なことがある. 早期癌の拡大内視鏡観察は,注腸造影検査や通常の内視鏡検査に比較して,診断率が高く,有力な検査と考えられた.
  • 田中 三千雄, 若林 泰文, 坂東 毅, 七沢 洋, 本間 保, 稲土 修嗣, 野尻 裕之, 渋谷 隆, 窪田 芳樹, 島田 一彦, 藤倉 ...
    1984 年 26 巻 4 号 p. 514-525_1
    発行日: 1984/04/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    内視鏡診断は内視鏡像の解析が何といっても基本となる.しかしながら内視鏡像の読みは,今日もなお主観的判断にもとずくところが大きい.このような状況を打破すべく,内視鏡像を客観的に表示する方法を試行することは今必要であると考えいくつかの観点からこの問題に対して検討を加えた. 最初にここに報告したのは,"色"の客観的表示に関するプロローグである.即ちこの目的に沿った内視鏡装置を開発し,その精度について基礎的な検討を加えたものである.本装置の特徴は(1)スコープでとらえた内視鏡像の一部分を分光色彩計で測定する.(2)測定中も測定部位を終始観察できる,(3)拡大内視鏡検査も兼ねることができる,などである. マンセル色票を対象とした検索によって,本装置は測定値の再現性,色(色相,明度,彩度)の識別能において秀れた精度をもっている事が明らかとなった.またカーソルの装備によって内視鏡の測定条件(距離角度,反射光)の一定化が可能であることも判明した. 以上の結果より,内視鏡像としてとらえた物体の色を分光色彩計によって客観的に表示することが可能であるとの結論を得た.
  • 桑山 肇, 竹内 勝啓, 松尾 裕, 本田 利男
    1984 年 26 巻 4 号 p. 526-530
    発行日: 1984/04/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    糖尿病患者における消化性潰瘍の合併について,従来非糖尿病患者のそれと比較して低いとする意見と,逆に高いとするものがあり一定の見解が得られていない.そこでコントロール目的で入院した糖尿病患者300名をat randomに選出して,同時期の一般入院非糖尿病患者300名と年齢・性比を一致させたmatched control studyを行った.その結果糖尿病患者の消化性潰瘍合併率は5%で非糖尿病患者のそれと比較して差を認めなかった.また,治療法との関係においては経口糖尿病剤およびインスリン治療群に消化性潰瘍の合併が多い傾向を示し,特にneuropathyを合併したものに明らかに消化性潰瘍の合併が高かった.
  • 岡本 平次, 佐竹 儀治, Hiromi SHINYA
    1984 年 26 巻 4 号 p. 531-538
    発行日: 1984/04/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    われわれは,最近1年間にShinya式大腸内視鏡検査を927例経験した.S状結腸から下行結腸への挿入法の理論と実際を解説すると共にその挿入法におけるスコープの硬さについても検討した.Shinya法での下行結腸への挿入パターンはHooking the fold法,Right tum shortening法,Alpha loop法の3つに大別できるが,自験例456例では,それぞれ30.5%,61.4%,6.6%であった.これらの手技にて大部分(98.5%)が下行結腸への挿入が可能であり,S状結腸が過長であるといわれている日本人にも十分Shinya式挿入法が応用可能であることが確認された.スコープの硬さに関しては,盲腸挿入率,到達時間,下行結腸への挿入法では,ほぼ同様の成績であったが,用手腹部圧迫法の頻度は硬目のスコープで低かった.Shinya式挿入法の導入により,最近3カ月257例では盲腸挿入率96.1%,平均到達時間7分8秒(±3分23秒)であり,大腸内視鏡検査も上部消化管並みのスクリーニング検査となり得ると考えたい.
  • 田中 康之, 吉田 茂昭, 山口 肇, 田尻 久雄, 竹本 照彦, 小沼 千秋, 大倉 澄子, 平嶋 登志夫, 吉森 正喜, 小黒 八七郎, ...
    1984 年 26 巻 4 号 p. 539-547_1
    発行日: 1984/04/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    最近9年間に,国立がんセンターで経験された,単発性陥凹型胃癌489例の内視鏡像の時代的変化及びこれに伴なう深達指標の変化について検討を加えた. 深達指標としては,粘膜ヒダの性状(F),陥凹面及びその辺縁の性状(D),周囲の隆起成分(E),短縮硬化(S),の4項目を選びだし,それぞれにscoreを配し,症例毎に合計した.これらの得点を年代別に比較検討し以下の結果が得られた. (1)各深達度とscoreには相関関係が得られた. (2)早期癌では最近において悪性所見に乏しい低scoreの癌の急増が明らかに認められたが,進行癌には内視鏡像の時代的変化は認められなかった. (3)最近の早期癌では従来より深達度指標の中心的存在であった.F,E,Sなどにおける深部浸潤所見はm,smを問わず認められなくなってきており,唯一陥凹面の所見としたDのscoreのみが,m,smの鑑別診断を可能とするものであった.
  • 藤倉 信一郎, 田中 三千雄, 若林 泰文, 坂東 毅, 七沢 洋, 稲土 修嗣, 窪田 芳樹, 野尻 裕之, 島田 一彦, 佐々木 博
    1984 年 26 巻 4 号 p. 548-556_1
    発行日: 1984/04/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     小腸の特に局所変化の内視鏡的診断能力を大巾に改善する目的で2チャンネル型Ropeway式小腸鏡(FIS-W)を開発した.改良点は以下の通りである.(1)有効長の短縮化.(2)鉗子孔の2チャンネル化.(3)緊張解除装置装着.(4)導入光量の増加.(5)アングル機構の4方向化.(6)視野角の広角化.(7)自動送気・送水・吸引装置装着.これらによるFIS-Wの視野の明るさ,観察の範囲,操作性,局所変化への対応などの性能は大幅に改善され,上部消化管内視鏡・大腸鏡に比較しても余り遜色の無いレベルに達している.その成果を如実に示した2症例(アメリカ釣虫症例,小腸潰瘍症例)を供覧する. Ropeway式小腸鏡の今後の課題として「小腸出血における緊急小腸鏡」の適応拡大を,また小腸鏡全体の課題として「小腸の局所変化の部位の判定」をあげて考案した.
  • 山科 明夫, 板垣 茂文, 金子 正幸, 松田 徹, 西城 義郎, 中島 俊雄, 上野 恒太郎, 石川 誠
    1984 年 26 巻 4 号 p. 559-565
    発行日: 1984/04/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     超音波内視鏡による胃癌の深達度診断の可能性を検討する目的で,診断の確定した早期胃癌4例,進行胃癌11例の計15例を対象として検査を施行した。超音波内視鏡の機種は,オリンパス・アロカ社製超音波内視鏡3号機を用い,脱気水を胃内に注入して走査を行なった.切除胃癌症例の切除胃は,水槽内に入れて超音波走査を施行し,体腔内走査との比較を行なった.また,胃壁及び腫瘍の深達度の超音波断層像を検討するため,切除胃の病理組織標本と超音波断層像とを対比した.その結果,1)胃壁の5層構造の描出が可能であり,固有筋層は低エコー層として認められた.2)進行胃癌は,固有筋層の破壊・断裂像が有力な診断根拠とされる場合が多いが,浸潤様式により,破壊が明瞭でなく,深達度診断判定が困難な症例が一部にみられた.3)Borrmann4型癌では,全例に5層構造の破壊された肥厚した胃壁が明瞭に描出された.
  • 宮川 晴雄, 布施 好信, 武知 桂史, 奥田 順一, 井田 和徳
    1984 年 26 巻 4 号 p. 566-571
    発行日: 1984/04/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     患者は61歳女性.胃集団検診にて,幽門前部の異常を指摘され,精査目的で来院した. レントゲンと内視鏡検査にて,前庭部後壁にIIC病巣が明らかになった.幽門前部の病変は,前壁と後壁にわたるひだ集中様の所見がみられ,bridge形成が疑われた.切除標本では,前庭部後壁に1.5×1.5cmのIIc病巣があり,組織学的には印環細胞癌で,深達度はmであった.mucosal bridgeの部位では,粘膜筋板の著明な肥厚がみられ,筋性の要素が強かった.筋板の途絶,断裂などは認めなかった.mucosal bridgeは先天的に形成されたと考えられた. この症例は,mucosal bridgeと早期胃癌の併存した初めての症例と思われる.さらに胃のmucosal bridge形成例を文献的にも検討を加え報告する.
  • 外山 久太郎, 一原 亮, 木田 光広, 小泉 和三郎, 小泉 博義, 熊本 吉一, 清水 哲, 増田 弘毅
    1984 年 26 巻 4 号 p. 572-576_1
    発行日: 1984/04/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    胃動静脈奇形は稀な疾患であり,殊に本邦での報告例は極めて少ない. 症例は75歳の女性で,吐血を主訴に入院したが,内視鏡検査中に再出血し緊急手術が行なわれた.内視鏡所見では,胃穹窿部小彎寄り後壁に立ちあがりのゆるやかな中央が溝状に陥凹した,略円形の隆起性病変が認められ,色調はやや青味を帯びていたが,正常胃粘膜に類似していた. 摘出標本の病理組織学的所見は,粘膜から漿膜下層にわたり不規則に拡張,蛇行し,中膜の肥厚が目立つ静脈と隣接して蛇行せる,細い動脈が認められ,かつ連続切片標本から両者を連絡する動,静脈いずれとも判別し難い異常血管が示唆され,動静脈奇形と診断された.
  • 丸山 英勝, 広岡 大司, 湯浅 肇, 板倉 恵子, 岡村 良邦, 福井 寛也, 上江洲 朝弘, 仲本 剛
    1984 年 26 巻 4 号 p. 579-583_1
    発行日: 1984/04/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    大量の吐下血を主訴として,救急来院し発見された糞線虫症の1例を経験したが,大量の吐下血が発見のきっかけとなった症例は文献的にも見いだせなかったので報告した. 症例は52歳の女性.沖縄県生れ,42歳で大阪府に転居,10年来消化器症状をくり返し,約5年前には原因不明の腸閉塞で入院した既往歴を有する. 来院一週間前より食欲不振,嘔吐,下痢,腹痛,腹部膨満感などの症状が増悪し,さらに吐下血を来したために救急来院,緊急内視鏡にて十二指腸下行脚の小潰瘍よりの拍動性出血を証明し緊急手術を施行,結紮止血後に潰瘍辺縁より生検,病理組織検査を行った結果,十二指腸粘膜に虫卵と虫体を発見した.その後,小腸造影,内視鏡,十二指腸液,糞便検査などにより糞線虫症と診断した.治療はThiabendazole 3g 3日間を1クールとし,2クールを施行したところ,糞便の虫卵,虫体の消失とともに術前認められた低栄養状態も改善,体重も5kg増加し,経過は順調である.
  • 1984 年 26 巻 4 号 p. 584-589
    発行日: 1984/04/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
  • 1984 年 26 巻 4 号 p. 589-594
    発行日: 1984/04/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
  • 1984 年 26 巻 4 号 p. 595-600
    発行日: 1984/04/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
  • 1984 年 26 巻 4 号 p. 601-605
    発行日: 1984/04/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
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