日本消化器内視鏡学会雑誌
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大量吐下血を来した糞線虫症の1例
丸山 英勝広岡 大司湯浅 肇板倉 恵子岡村 良邦福井 寛也上江洲 朝弘仲本 剛
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1984 年 26 巻 4 号 p. 579-583_1

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抄録
大量の吐下血を主訴として,救急来院し発見された糞線虫症の1例を経験したが,大量の吐下血が発見のきっかけとなった症例は文献的にも見いだせなかったので報告した. 症例は52歳の女性.沖縄県生れ,42歳で大阪府に転居,10年来消化器症状をくり返し,約5年前には原因不明の腸閉塞で入院した既往歴を有する. 来院一週間前より食欲不振,嘔吐,下痢,腹痛,腹部膨満感などの症状が増悪し,さらに吐下血を来したために救急来院,緊急内視鏡にて十二指腸下行脚の小潰瘍よりの拍動性出血を証明し緊急手術を施行,結紮止血後に潰瘍辺縁より生検,病理組織検査を行った結果,十二指腸粘膜に虫卵と虫体を発見した.その後,小腸造影,内視鏡,十二指腸液,糞便検査などにより糞線虫症と診断した.治療はThiabendazole 3g 3日間を1クールとし,2クールを施行したところ,糞便の虫卵,虫体の消失とともに術前認められた低栄養状態も改善,体重も5kg増加し,経過は順調である.
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© 社団法人日本消化器内視鏡学会
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