日本消化器内視鏡学会雑誌
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胃衝突癌の1例
南部 修二田中 三千雄渋谷 隆藤倉 信一郎佐々木 博広川 慎一郎山田 明藤田 敏雄
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1984 年 26 巻 7 号 p. 1118-1125_1

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抄録

 胃の扁平上皮癌成分を含む胃癌は稀なものである.著者らは胃原発の扁平上皮癌と腺癌との衝突癌を経験したが,扁平上皮癌部の実体顕微鏡観察を行い特異な所見を得た. 症例は71歳女性で全身倦怠感を主訴に来院し,胃X線検査,内視鏡検査にて胃角部から幽門前庭部にかけてBorrmann2型の癌を認めた.その生検組織では,癌の肛門側に腺癌,口側に扁平上皮癌が認められた.本例に胃亜全摘術および横行結腸部分切除術を施行した.切除標本では,癌の大部分は扁平上皮癌であり周堤の一部に腺癌が認められたが,両者は結合織により明瞭に境界されており,腺癌と扁平上皮癌の衝突癌であった.扁平上皮癌部の実体顕微鏡観察では,潰瘍底を観察すると直径約300~400μ の豆状小突起が多発している像がみられ,これは組織学的には扁平上皮癌が潰瘍底にむかい突出している像であった.また,扁平上皮癌部と非癌部との境界は極めて明瞭に境界されていた.これらの所見は,今後内視鏡下に直接扁平上皮癌を診断する上でのひとつの手がかりを得たものと思われる.また,本邦報告例の扁平上皮癌成分を含む胃癌142例について集計し,その臨床像についてもあわせて検討を加えた.

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