日本消化器内視鏡学会雑誌
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大腸内視鏡で観察できた回腸リンパ管腫の1例
藤巻 英二狩野 敦折居 正之加藤 浩平菅井 俊籏福 公正安宅 龍一郎小豆島 正博栃内 秀貴鈴木 恒男
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1984 年 26 巻 8 号 p. 1337-1343_1

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抄録
 患者は51歳の女性で,下腹部痛を主訴として近医を受診し,精査目的で当科に紹介され,入院した.入院時右下腹部に圧痛を伴う腫瘤状の抵抗を触知し,検査上白血球増多と便潜血反応強陽性を認めた.超音波検査にて,右下腹部に中心より高エコー,低エコー,無エコーの層状を呈する腫瘤エコー像を認め,回盲部の腸重積症が疑われ,注腸造影で母指頭大の腫瘤を先進部とする回盲部重積症と診断した.大腸内視鏡検査を施行し,先進部腫瘤は表面の性状より上皮性腫瘍と考えられたが,生検では正常小腸粘膜であった.開腹すると,腫瘤はBauhin弁より口側23cmに存在し,18×15×30mmの大きさで,16mmの茎を有し,表面は顆粒状で分葉していた.組織学的にはリンパ管腫であった.術前に臨床的検索が行なわれた小腸リンパ管腫はほとんど報告がなく,非常に貴重な症例であった.腸重積の診断には超音波検査が有効であったが,生検を含めた内視鏡検査でも先進腫瘍の質的診断は困難であった.
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© 社団法人日本消化器内視鏡学会
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