日本消化器内視鏡学会雑誌
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急性出血性直腸潰瘍―臨床像を中心に―
広岡 大司湯浅 肇板倉 恵子山本 博岡村 良邦福井 寛也梁 勝則喜多野 三夫三輪 博久
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1984 年 26 巻 8 号 p. 1344-1350_1

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抄録
 大量の新鮮下血をもって発症し特徴的な臨床像および内視鏡像を呈した直腸潰瘍を10例経験した.10例はいずれも重篤な基礎疾患を有する高齢者で9例が女性であった. 基礎疾患の内訳は脳血管障害6例,大腿骨頸部骨折に肺炎合併2例,糖尿病性ケトアシドーシス1例,心不全に肺炎合併1例と脳血管障害が多く見られた. 病変の内視鏡的特徴は歯状線直上の下部直腸に限局する浅い不整形,地図状ないし帯状の横軸に長い潰瘍で,管腔の1/3周ないし全周に達する点にあった. また一般に出血は大量ではあるが露出血管の結紮やタンポナーゼなどの適切な止血処置により止血可能であった.経過は基礎疾患により異なるが,潰瘍の経過は一般に良好で20日以内に瘢痕化がみられた. 河野らは同様の臨床像,内視鏡像を呈する2自験例を急性出血性直腸潰瘍と命名して報告し,そのなかで,同疾患の頻度はそれ程少くないことを記述している. 筆者らも急性出血性直腸潰瘍の頻度は少くないと考えており,高齢化社会が進むなかで重要な疾患の一つになると考えられたので,一つの臨床概念とすることを提唱した.
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© 社団法人日本消化器内視鏡学会
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