抄録
先端に電極を装着した二重管腔チューブを内視鏡鉗子孔より挿入し,内視鏡直視下に測定部粘膜にチューブ先端を接触させ,チューブに試験液をe流しながらpotential difference (PD)を連続的に記録させた.灌流液中のNaCIを変換することによって生ずるPDの変化(△PD)のhalf time(t1/2)を計測し,Diamondの式から胃および十二指腸球部における機能的不攪拌水層の厚さを算出した.胃粘膜についてこの厚さを測定するのは初めての試みである. 95例の178カ所を対象として測定を行い,次のような結果をえた.正常粘膜部においては,この厚さは胃で205.8±71.9μm(±SD),球部では224.5±73.1μmであった.病変部では正常部に比低値の傾向を示した.正常胃粘膜部の厚さは胃潰瘍患者に比し十二指腸潰瘍患者でやや高値を示し,また胃酸分泌能との間に正の相関がみられた.この厚さの臨床的意義はなお明らかでないが,胃粘膜防御機構の一つの指標となりうることが示唆された.