日本消化器内視鏡学会雑誌
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ERCPにより診断された門脈穿破膵仮性嚢胞の1例
鈴木 洋介中沢 三郎市川 和男
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1985 年 27 巻 4 号 p. 539-544

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抄録

 症例は47歳男性.長期の飲酒歴と胆石手術の既往あり.上腹痛にて入退院をくり返し,慢性再発性膵炎と診断されていた.上腹痛増強にて入院.入院後腹痛は軽減したが,高アミラーゼ血症が遷延するのでERCPを施行した.膵管の造影に続き膵頭部に造影剤の不整なpoolingを認め,これに連続して門脈走行に一致した脈管構造が描写され,膵仮性嚢胞の門脈穿破と診断した.超音波検査,CT,腹部血管造影でもERCPでの診断に矛盾しない変化が把えられた.超音波誘導下に肝内門脈枝を穿刺したところ,アミラーゼ高単位の褐色穿刺液が採取され,造影剤を注入するとERCPで造影されたものと同一走行の脈管構造が描写され診断が確定された.経皮的ドレナージを施行し,腹痛の消失,高アミラーゼ血症の改善を認めた.膵仮性嚢胞の門脈穿破は極めて稀であり生前診断し得た例の報告は少ない.ことにERCPにより診断されたのは本例が2例目である.

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