抄録
53歳の女性の潰瘍性大腸炎に併存した虫垂原発のmucinous cystadenocarcinomaを報告した.十二指腸潰瘍で通院加療中に突然1日数回の粘血便が出現した.注腸造影で微少ニッシェを呈する全結腸型の潰瘍性大腸炎と辺縁の不整を伴う虫垂内腔の拡張が認められ,内視鏡的にも虫垂開口部の腫大が観察された.手術切除標本で虫垂は6×2cmと腫大し,壁は肥厚し,拡張した内腔には膠様の粘液が充満していた.病理組織学的に潰瘍性大腸炎に併存した虫垂原発のmucinous cystadenocarcinoma, mixed typeで局所的な腹膜偽粘液腫の像も示していたが,所属リンパ節転移はなく,患者は術後11カ月健在である.本症例は潰瘍性大腸炎の癌化例というよりは,むしろ虫垂癌が潰瘍性大腸炎に先行,または独立して発生した例と考えられた.