抄録
Mallory-Weiss症候群について,その成因を明らかにするため,自験例115例について臨床像の特徴と発症に関与すると思われる臨床的諸因子の検討を行った. 年齢は平均51.5歳で男性が92.2%を占めた.中高年の男性に多いことは,飲酒家が72.2%であり,飲酒ともっとも関連づけられた.裂創の発生部位は,噴門部胃粘膜(79.2%)で,しかも小彎(51.5%)に多かった.慢性萎縮性胃炎の併存は,51例の病理組織学的検討では92.2%に認められ,44例の内視鏡的コンゴーレッド法での検討ではopentypeが72.7%,31例の胃液検査での検討では低酸が58.1%で頻度,程度とも高いことが示された.食道裂孔ヘルニアの併存については確診は13.4%でコントロール群と比べても多くはなかった. 発症助長因子として,慢性萎縮性胃炎に伴う粘膜の脆弱性が大きな役割を果たしていると推察された.