日本消化器内視鏡学会雑誌
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大腸polyp症例の検討―腺腫と早期癌を中心に―
五十嵐 潔渡部 博之島 仁長沼 晶子鈴木 俊太郎長沼 敏雄千葉 満郎荒川 弘道正宗 研吉田 司佐藤 家隆
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1986 年 28 巻 10 号 p. 2275-2281

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抄録

 過去6年間に内視鏡検査で診断した大腸polypは312症例635病変である.外科で手術を受けた早期癌16症例22病変を除き,すべてに内視鏡的polypectomyを施行した.病理組織学的診断の結果は,腺腫433病変68.2%,早期癌78病変12.3%(m癌53病変,sm癌25病変),その他124病変19.5%であった.腺腫,早期癌について検討した.腺腫と早期癌の比率は男性に比べ女性でやや高かった.年齢分布は腺腫,早期癌いずれも50歳代にpeakがみられ,病変の大きさが増すほど早期癌の頻度は高かった.部位別に腺腫に対する早期癌の比率を求めると,直腸,S状結腸,および上行結腸では下行結腸,横行結腸に比し高かった.腺腫を伴った早期癌の頻度は89.7%,腺腫を伴わないものは10.3%であった.腺腫を伴った早期癌のうち,ca/adではm癌が,ad/caではsm癌が多かった.m癌,sm癌ともIsの形態をとるものが最も多かったが,次いでm癌ではIp,sm癌ではIIa,IIa+IIcが多かった.腺腫を伴わない早期癌は,すべてsm癌で,IIa+IIc,IIaの形態をとるものが多かった.adenoma-carcinoma sequenceはほぼ確立された概念であるが,摘除した早期癌の標本は癌への進展過程の一断面を示したものであり,癌化の過程,あるいはその進展経路,すなわちnatural historyを解明するには,今後集積された多くの症例について,綿密な解析が必要と考えられる.

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© 社団法人日本消化器内視鏡学会
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