抄録
比較的稀な腹部腫瘍2症例の腹腔鏡所見について報告した.症例1は微熱,左悸肋部痛の主訴で入院した76歳男性である.入院時血液検査所見は著明な炎症状態を示し,腹部エコー,肝シンチ,腹部CT,ERCP,血管造影等の画像診断で後腹膜腫瘍と診断した.腹腔鏡検査では壁側,臓側腹膜に黄白色調の結節を認め,また肥厚した臓側腹膜に部分的に被われているが,被膜のない灰色の巨大腫瘍を認めた.腫瘍生検組織像は光顕および電顕的に悪性線維性組織球腫に該当する像であった.症例2は71歳女性で,高熱を主訴に入院した.入院時血液検査は著明な炎症状態を示し,諸種画像診断にて肝癌と疑診した.腹腔鏡検査では黄白色,扁平な不整形腫瘍が肝表面および壁側,臓側腹膜にみられ,腹膜悪性中皮腫および肝転移と診断され,組織学的にも証明された. 本2症例の診断上,諸種検査の中で腹腔鏡検査が最も有用であった.