日本消化器内視鏡学会雑誌
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悪性食道・噴門狭窄に対する内視鏡的挿管術の試み
小林 正夫中島 正継藤本 荘太郎今岡 渉吉田 俊一安田 健治朗趙 栄済西村 和彦向井 秀一清田 啓介松井 亮好木本 邦彦山口 勝通吉中 正人
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1986 年 28 巻 11 号 p. 2640-2648_1

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抄録
 狭窄症状の強い手術不能の食道癌6例と噴門部胃癌5例の計11例に内視鏡的食道内挿管術を施行した.用いた内瘻用留置チューブは,わが国のニプロ社と住友べ一クライト社で試作されたもの(それぞれ外径11mm,12mm),及び英国Medoc社より市販されているパルジョンチューブ(外径14mm)で,チューブの挿入方法は,細径ファイバースコープ(Olympus GIF-XP,外径7.8mm)に押し込み用チューブ(外径14mm,長さ60cm)をかぶせ,その先に留置用チューブを装着し,スコープが狭窄部を通過した後にそのスコープをガイドとして,X線透視下に押し込み法にて挿管を行った.なお,狭窄の程度が著明な場合には,予めバルーンカテーテルによる拡張術を施行した後に挿管術を行った.挿管術を施行した11例全例において狭窄症状の改善が認められ,術後合併症は11例中1例に胸水貯留を認めたのみであった.術後のチューブ留置期間は,術後40日目生存中の1例を除き最短8日間から最長119日間であり,いずれも原病死するまでの間は良好な経口摂取を維持できた.本法は手術不能の悪性疾患の狭窄症状の改善を目的としたものであり,それ自体では生存期間の延長を望めないものの,他の拡張術や挿管術に比べて勝れており,患者の"Quality of life"を考える上でも有意義な方法として評価しえる.
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© 社団法人日本消化器内視鏡学会
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