日本消化器内視鏡学会雑誌
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Pharmacoendoscopyを用いた陥凹型早期胃癌の浸潤範囲診断の検討
―特に内視鏡的色調と画像処理による癌巣粘膜内血管床との関連性について―
小泉 和三郎大井田 正人西元寺 克禮岡部 治弥中 英男
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1986 年 28 巻 3 号 p. 493-507

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抄録

 陥凹型および平坦型早期胃癌の癌巣粘膜内血管床の実態を知る目的で,画像解析装置を用い,健常部(N)に対する癌巣(C)粘膜内総血管断面積比(以下C/Nratio)を血管床比として算出し,内視鏡的色調ならびに組織型との関連を比較検討した.早期胃癌の色調は粘膜内血管床,特に粘膜上層の血管床と有意に相関した(p<0 .001).組織型を3型[1.分化型腺管腺癌,2.trabecularまたはmicroglandular structureを主とする低分化型腺癌,3.粘液細胞癌を主とし,anaplasticな増生を呈する未分化型腺癌]に分類し,C/N ratioを比較検討をした.低分化型腺癌は最も高値を示し,未分化型腺癌は最も低値を示し,両者に有意な差を認めた(p<0.01) .なお,分化型腺管腺癌はその中間型を示した.次いで血管作動物質(epinephrine+prostaglandin E1)を用いたPharmacoendoscopyによる早期胃癌の浸潤範囲診断(以下PEP)の有効性と血管床との関連を検討した.本法有効例(15例)のC/N ratioは,無効例(12例)のそれに比して明らかな高値を示した(p<0.001).すなわち,有効症例の癌巣粘膜は豊富な血管床を有していた.この事実はPEPのメカニズムを知る上で重要な知見と考えられた.

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