抄録
上部消化管の粘膜下腫瘍,および粘膜下腫瘍との鑑別を必要とした他臓器の圧排の計76例に内視鏡的超音波断層法(Endoscopic Ultrasonography, EUS)を施行し,その診断能を検討した.対象は45例の粘膜下腫瘍と31例の他臓器の圧排変化で,この両者は本法を用いることにより容易に鑑別可能であった.また粘膜下腫瘍例では最小腫瘍径数mmのものでも明瞭に識別され,全例で腫瘍の超音波断層像が観察可能であった.さらにEUSの消化管壁層構造描出能に基づき,粘膜下腫瘍の局在診断を行った.この結果,粘膜筋板層(mm層)由来の平滑筋腫,粘膜下層(sm層)に局在する迷入膵,壁内のう胞,脂肪腫,線維腫が描出され,そのエコー像の検討から,質的診断への可能性も示された.固有筋層(pm層)発生の平滑筋腫並びに平滑筋肉腫についても,pm層と病変との連続性を指摘することにより容易に診断でき,さらに腫瘍径の客観的描出も可能であった. 以上,粘膜下腫瘍に対する超音波内視鏡の診断能は極めて高く,X線検査,内視鏡検査を補う検査法として高く評価できるものであった.