抄録
最近われわれは,いずれも粘血便を主訴として来院し,大腸内視鏡検査にて発赤したいも虫状隆起や潰瘍性病変あるいはびらんを認め,同部の生検にて特徴的な病理所見を示したSolitary ulcer syndrome of the rectumの3症例を経験した.症例は17歳男性,15歳女性,13歳男性といずれも若年者で,トイレに長時間入るいわゆるstrainerであった.潰瘍性大腸炎の治療を受けた時期もあり,診断までに数年の病悩期間を有していた.病因は不明で治療も極めて難治性であるとされているが,われわれの経験した症例も,リンデロン坐薬などによる治療を試みたが効果はなかった.経時的な内視鏡観察では,びらんや隆起に種々の変化を認めた.病理学的には,1例でその経過中に生検にて若干の変化を認めた.