抄録
全周性の隆起病変を呈した孤立性直腸潰瘍症候群の1例を報告する.症例;14歳,男性.主訴;肛門出血,排便時の粘液排出.直腸指診にて肛門縁より約4cmの部位に輪状に連なる弾性硬の病変を触知した.大腸内視鏡検査では,下部直腸に表面は発赤状で,微小びらんを有する全周性の隆起性病変を認め,生検組織にて粘膜固有層内に特徴的な線維化(fibromuscular obliteration)が顕著で,本症の診断が確定した.本症においては,肉眼形態上,全周性隆起を呈するものは稀であり,文献的考察を加え報告する.