抄録
十二指腸乳頭部の腺腫4例および癌の共存した腺腫1例につき報告する.男性4例,女性1例で,年齢は50~80歳.4例はそれぞれ心窩部痛,掻痒感,黄疸,体重減少を主訴として受診したが,1例は肝硬変で通院中,上部消化管内視鏡検査により偶然発見された.内視鏡所見では3例に乳頭部腫瘤を認めたが,2例は乳頭腫大のみであった.生検を施行した4例中3例はGroupIII,1例はGroupII.ERCPでは全例膵管像には異常なく,胆管像では2例に総胆管末端部の腫瘤陰影を,1例に総胆管結石を認めたが,2例には異常を認めなかった.治療は1例に膵頭十二指腸切除術,3例に乳頭部切除術を施行したが,1例は肝硬変のため手術を施行しなかった. 乳頭部腺腫は,術前の生検によっても良悪性を鑑別することは困難なことがあり,癌の共存する例もあることより,治療方針を決定する上にはERCP等による十分な検索が必要と思われる.