1987 年 29 巻 12 号 p. 3109-3114_1
症例は75歳の女性.右季肋部痛,背部痛を主訴に来院しエコー,CT,ERCP,血管造影にて進行胆嚢癌と診断された.門脈~動脈への浸潤により,手術不能と判断し,Mitomycin C (MMC)のone shot動注を施行した.経過中下血が見られ,胃内視鏡によりBorrmann III型胃癌からの出血が確認された.保存的に止血され,以後胆嚢と胃の栄養動脈よりMMC,Adriamycinの動注を行ったが治療後2週間で胃癌よりの出血が止まらずショック状態で死亡した.剖検にて,胆嚢の腺扁上皮癌と胃の腺癌が確認され同時重複癌であった.重複癌の頻度は増加傾向にあり今後も内視鏡と超音波検査の併用により同様の症例の増加が予想される.さらに胃,胆嚢重複癌と胆嚢腺扁平上皮癌に関する文献的な考察を加えて述べた.