抄録
最近5年間に65例の腸炎ビブリオ腸炎を経験し,その内13例に大腸内視鏡検査を行ったのでその内視鏡像を中心に検討した.13例中10例に発赤,出血,ビランなどの所見がみられ終末回腸は観察8例中7例,バウヒン弁は9例中6例と回盲部に高頻度に病変が見られた.2例ではS状結腸,下行結腸に縦走する出血,ビランを認め,虚血性大腸炎と類似した像を呈した.腸炎ビブリオは組織侵入性はないが腸管内で耐熱性溶血毒を産生し,この毒素は腸管上皮細胞に対して強い細胞毒性を示すことが知られているので,回盲部に高頻度でみられた出血,ビランはこの機序により生ずるものと考えられた.そして,S状結腸,下行結腸にみられた縦走性の病変は例外的で,外毒素により蠕動亢進がおこりこれによる腸管虚血が関与して発症した可能性も推測された.