日本消化器内視鏡学会雑誌
Online ISSN : 1884-5738
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29 巻, 3 号
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  • 足立 ヒトミ
    1987 年 29 巻 3 号 p. 455-471
    発行日: 1987/03/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    肝硬変患者の胃粘膜病変の成因を追求する目的で,以下の検討を行った.(1)肝硬変患者174例の胃粘膜発赤所見を,内視鏡的に,部位,形態別に検討した。(2)肝硬変症の胃粘膜血行動態を,水素クリアランス法,及び臓器反射スペクトル解析法により検討した.(3)肝硬変患者の胃粘膜攻撃因子として,胃液酸・ペプシン活性及び,血清ペプシノーゲン1(以下PGIと略す)値を検討した. その結果(1)胃粘膜発赤所見の出現は,胃集検群に比べ,肝硬変群(以下LC群と略す)で多く,特に胃体部大彎に斑状発赤が多かった.この傾向は,食道静脈瘤が高度な程,また肝障害度が高度な程,強くみられた.(2)LC群の胃体部粘膜血流量は健常群に比し低下しており,血液量は軽度増加,酸素飽和度は有意に低下しており,胃体部粘膜血流のうっ滞が強く示唆された.LC群の中で,有発赤群はさらに血流量が低く,発赤所見は血流うっ滞が関与すると推測された.また食道静脈瘤が高度な程,肝障害度が高度な程,胃体部血流のうっ滞は増加することが示唆された.(3)胃粘膜攻撃因子は,LC群が,健常群に比べ,胃液酸は低下傾向を示し,ペプシン活性及び血清PGIは有意に低下していた.しかし潰瘍合併LC群では,非合併LC群に比べ,高い傾向を示した. 以上よりLC群における胃粘膜病変の成因には,胃粘膜血流うっ滞による粘膜の脆弱化が基礎にあり,それに攻撃因子が関与することが強く示唆された.
  • 江口 敏, 豊永 純, 井上 林太郎, 大曲 和博, 大久保 和典, 下津浦 康裕, 永田 一良, 佐々木 英, 谷川 久一, 鹿毛 政義, ...
    1987 年 29 巻 3 号 p. 472-478_1
    発行日: 1987/03/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    われわれは食道静脈瘤に対し完全消失を目的として内視鏡的硬化療法(Endoscopic Injection Sclerotherapy以下EIS)を施行しているが3例の難治例を経験した.EISにて完全消失を得た成功例のうちEIS前後に門脈造影を施行した14例と内視鏡所見,EIS概要(EIS頻度,使用EO量,治療期間),門脈造影所見,門脈圧を比較し検討した.術前の内視鏡にてhigh grade varicesの所見を呈し,門脈造影にて食道静脈瘤を形成する以外の副行路がない副行路形式を取り,胃冠状静脈(以下CV)径が大きく,門脈圧が高い症例は難治例と推定できる.またEIS開始後も成功例の平均であるEIS5回,5%EO総量36ml,治療期間3カ月にても静脈瘤に顕著な改善がみられない時は難治例と言える.難治例が推察される時は薬剤や手技の工夫とともにPTOの併用や観血的治療の考慮が必要である.
  • 辻 晋吾, 佐藤 信紘, 川野 淳, 福田 益樹, 永野 公一, 荻原 達雄, 房本 英之, 鎌田 武信
    1987 年 29 巻 3 号 p. 481-485_1
    発行日: 1987/03/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    消化管疾患診断において画像診断は重要な位置を占めているが,近年画像処理を駆使して画像診断の精度を向上する試みがなされている.一方,電子内視鏡が開発され,本装置による画像処理に期待が寄せられている. 今回,われわれはWelch-Allyn社製電子内視鏡を画像解析装置に直接接続し,内視鏡画像からのシグナルを処理し,胃粘膜血液量画像の作成を試みた.得られた画像と反射スペクトル解析法により得られた粘膜ヘモグロビン濃度との関係について検討した結果,電子内視鏡から得られたシグナルは粘膜―内視鏡間の距離4~6cmの間で,粘膜ヘモグロビン濃度と正の相関を持つことが明らかとなった. さらに,脱血ショック負荷時のラット胃粘膜血液量分布の変動を検討したところ,脱血時の胃粘膜血液量は不均一に低下することが明確に示された.本法は内視鏡を用いた消化管血流機能解析に有用であると考えられた.
  • 福田 益樹, 川野 淳, 佐藤 信紘, 松村 高勝, 島津 亮, 永野 公一, 荻原 達雄, 辻 晋吾, 谷村 博久, 伊藤 敏文, 鎌田 ...
    1987 年 29 巻 3 号 p. 486-491_1
    発行日: 1987/03/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    十二指腸潰瘍患者22名,健常者18名において,十二指腸球部と十二指腸潰瘍辺縁粘膜および胃の粘膜血液量指標(△Er)とヘモグロビン酸素飽和度指標(粘膜酸素化指数;f)を内視鏡下に,臓器反射スペクトル解析法を用い測定し,十二指腸潰瘍存在時の十二指腸および胃の粘膜血行動態について検討した.その結果,十二指腸球部粘膜の血液量は潰瘍活動期に増加し,治癒期以後低下し元のレベルに復した.一方,潰瘍辺縁粘膜血液量は潰瘍活動期に周囲粘膜に比べて少なく,治癒期に増加し,その後瘢痕期に低下し周囲粘膜と同程度になった.一方,十二指腸潰瘍辺縁粘膜のヘモグロビン酸素飽和度はいずれの時期でも約60%と変化しなかった.また,十二指腸潰瘍患者の胃粘膜血液量は,潰瘍のステージに関係なく健常者に比べて常に多く,その血行はhyperdynamicな状態にあることが明らかとなった.
  • 稲土 修嗣, 田中 三千雄, 佐々木 博
    1987 年 29 巻 3 号 p. 492-503
    発行日: 1987/03/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    ヒト十二指腸において,内視鏡的に十二指腸炎を(1)発赤型(65例),(2)ビラン型(25例),および(3)粘膜粗〓型(4例)に分類し,その粘膜の機能と形態について正常部位(200例)と対比検討し,以下の特徴を認めた.(1)メチレンブルー吸収能およびアルカリフォスファターゼ活性は正常部位に比し,十二指腸炎では3型とも著明に低下していた.(2)実体顕微鏡観察にて正常例では葉状,尾根状を示す絨毛が主体であったが,十二指腸炎では絨毛が平坦化ないし癒合した旋回状,萎縮1型,萎縮2型が多く観察された.(3)絨毛の高さは3型とも低く,絨毛の巾は発赤型でのみ広かった.(4)組織学的には胃型上皮化生の出現頻度が3型とも高値を示した.(5)粘膜固有層への浸潤細胞密度は発赤型では正常部位と差を認めなかったが,ビラン型,粘膜粗〓型では有意に増加していた. 以上の所見から内視鏡的に発赤型,ビラン型,粘膜粗〓型として観察される3型を十二指腸炎と診断する事が妥当と考えられた.
  • 林 繁和, 江崎 正則, 小島 洋二, 山田 昌弘, 土田 健史, 吉井 才司
    1987 年 29 巻 3 号 p. 504-508_1
    発行日: 1987/03/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    最近5年間に65例の腸炎ビブリオ腸炎を経験し,その内13例に大腸内視鏡検査を行ったのでその内視鏡像を中心に検討した.13例中10例に発赤,出血,ビランなどの所見がみられ終末回腸は観察8例中7例,バウヒン弁は9例中6例と回盲部に高頻度に病変が見られた.2例ではS状結腸,下行結腸に縦走する出血,ビランを認め,虚血性大腸炎と類似した像を呈した.腸炎ビブリオは組織侵入性はないが腸管内で耐熱性溶血毒を産生し,この毒素は腸管上皮細胞に対して強い細胞毒性を示すことが知られているので,回盲部に高頻度でみられた出血,ビランはこの機序により生ずるものと考えられた.そして,S状結腸,下行結腸にみられた縦走性の病変は例外的で,外毒素により蠕動亢進がおこりこれによる腸管虚血が関与して発症した可能性も推測された.
  • 上野 文昭, 荒川 正一, 岩村 健一郎, 高橋 裕, 加藤 真明
    1987 年 29 巻 3 号 p. 509-515_1
    発行日: 1987/03/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    大腸内視鏡検査に必須の腸管前処置は簡便,効果的で,被検者恭耐え易く,かつ安全であることがのぞましいが,従来の前処置法がこれらを必ずしも満足しているとは言い難い.近年開発されたポリエチレングリコールと硫酸ナトリウムを含む特殊組成電解質液は経口摂取された後に消化管でほとんど吸収も分泌も受けないため腸管洗浄液として優れている.われわれは全大腸内視鏡検査70症例の前処置にこの電解質液を用いた.大多数の症例では検査当日4時間以内に前処置を完了し,その洗浄効果は優秀ないし良好であった.被検者は従来法に比して本洗浄法を好んだ.洗浄液摂取に関連した副作用は経験しなかった.非吸収性,非分泌性特殊組成電解質液を用いた全腸管洗浄は臨床的に有用な大腸内視鏡検査前処置法である.
  • 長廻 紘, 長谷川 かをり, 飯塚 文瑛, 屋代 庫人, 野口 友義, 椋棒 豊, 吉利 彰洋, 田中 俊夫
    1987 年 29 巻 3 号 p. 516-521
    発行日: 1987/03/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    全大腸を検査し,組織学的に確認することのできた中等大(11-20mm)の腺腫・早期癌(文中ポリープ)につき検討した.比較のため6-25mmのポリープを検討対象とし,337個のポリープが対象となった.内訳は腺腫239個,早期癌98個(29%)であり,早期癌はm癌81個,sm癌17個であった.癌化率は16-20mmの群に最も高かった.大きいほど下部大腸,小さいほど右側結腸のポリープの占める率が高かった,癌化は直腸に最も高率であり,口側にいくに従ってその率が低くなる傾向がみられた.ポリープを型別に分けると広基性が72個21%有茎性が265個79%であった.癌化率は広基性21%,有茎性31%であったが,11mm以上のものでは両者ほぼ等しい(約50%)癌化率を示した.有茎性ポリープではm癌がsm癌の約7倍と圧倒的に多いのが特徴的であった.
  • 八嶌 俊, 房本 英之, 永野 公一, 辻 晋吾, 林 紀夫, 川野 淳, 佐藤 信紘, 鎌田 武信, 吉岡 敏治, 東山 聖彦, 桜井 幹 ...
    1987 年 29 巻 3 号 p. 522-529
    発行日: 1987/03/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    除草剤パラコートによる生体の消化管病変を明らかにするため,パラコート中毒患者7例に対し,中毒早期より内視鏡検査を施行し,その内視鏡像および臨床経過より以下の結論を得た. 1.パラコートによる上部消化管病変は主に表層性の炎症,びらん,潰瘍を呈する. 2.障害は食道,胃体上部に多くみられ,十二指腸では少ない.特に食道病変は全例にみられ,しかも障害の程度は食道の下部にいくほど高度である. 3.病変の治癒は比較的速やかである. 4.消化管病変発生機序として,パラコートイオンによる消化管粘膜への直接の腐蝕作用が考えられる.
  • -膵実質エコーと加齢による膵変化の検討を加えて-
    野口 隆義, 相部 剛, 大村 良介, 中田 和孝, 秋山 哲司, 天野 秀雄, 富士 匡, 竹本 忠良
    1987 年 29 巻 3 号 p. 531-537
    発行日: 1987/03/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    ERCPで診断された慢性膵炎37症例(慢性膵炎I群28例,II群9例)と慢性膵炎のない21症例に超音波内視鏡検査(EUS)を施行し,その所見を検討した。その結果,慢性膵炎I群におけるEUSの正診率は93%で,USの54%よりもはるかに高かった。さらに,EUSではUSで描出不明瞭な膵の内部エコーの不均一像や膵辺縁の不整像が高率に描出された。また,膵内部エコーの変化は慢性膵炎II群にも比較的高率に認められ,加齢による膵内部エコーの変化と明らかに異なった.しかし,この膵内部エコーの変化は慢性膵炎のない7例にも認められることがあり,慢性膵炎に特異的な所見かどうかについてはさらに症例を重ねて検討する必要がある.
  • 原田 仁史, 友田 純, 上坂 好一, 板野 徹, 杉原 徹, 香川 俊介, 渡辺 正朝, 藤木 茂篤, 中郷 玄太郎, 本郷 俊樹, 森本 ...
    1987 年 29 巻 3 号 p. 538-542_1
    発行日: 1987/03/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    症例は40歳男性で,糸球体腎炎による腎機能の低下のため昭和57年より血液透析を行っている.昭和59年2月,嘔気,貧血の増強,便潜血陽性を認めたため,同年4月,内視鏡検査を行い食道中部に粘膜下血腫を認めた。同日午後には血腫は食道内腔の半周にまで広がっており,引き続き粘膜の剥離と出血を認めた.食道粘膜剥離と診断し,消化性潰瘍に準じた保存的治療を行った結果,1カ月後には剥離部は粘膜に覆われ,瘢痕性狭窄,変形など残さず治癒した。その後,現在まで経過は順調であり,再発も認めていない.食道粘膜剥離の症例は報告例も少なく,さらに食道粘膜下血腫から粘膜剥離が発生し,治癒するまでの経過を追求した報告例は非常に稀である.
  • 岡本 年弘, 渡辺 泰博, 谷合 明, 村田 洋子
    1987 年 29 巻 3 号 p. 543-546_1
    発行日: 1987/03/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    最近,われわれは食道壁内嚢腫の1例を経験したのでここに報告する.症例は19歳男性.主訴は心窩部の圧迫感,食思不振.上部消化管造影,食道内視鏡にて下部胸部食道(Ei)に粘膜下腫瘍をみとめた.胸部CTscanでは明らかなる腫瘤影を認めないため,超音波内視鏡を行ったところ,食道固有筋層内の平滑筋腫と診断した.右開胸にて食道腫瘤核出術を施行した.腫瘤は食道の筋層内に存在し,白色のペースト状の内容物をもつ嚢腫であった.病理組織学的には,嚢腫の被膜は多列線毛上皮及び平滑筋の壁にて構成され,軟骨組織は有していなかった.気管支由来の食道嚢腫と診断した.
  • 三宅 周, 岩野 瑛二, 佐々木 俊輔, 安原 高士, 尾上 公昭, 川口 憲二, 河野 宏
    1987 年 29 巻 3 号 p. 549-553_1
    発行日: 1987/03/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    クローン病(以下CDと略す)は,消化管のどの部位にも生じうるとされている.著者らは,限局性腸炎の手術後1年および13年後に下咽頭に潰瘍を生じ,病理学的に肉芽腫を証明しえた1例を経験した.症例は37歳男性で,23歳のとき口内炎,24歳に限局性腸炎にて回盲部切除,25歳で下咽頭潰瘍,26歳のとき扁桃腺炎の既往がある.このたびは1985年10月に咽頭痛が出現し,12月には同症状が増強し,翌年1月まで当院耳鼻科に入院した.しかし,退院後の内視鏡検査にて下咽頭に巨大潰瘍ができており,生検にて肉芽腫をみとめたので同部位のCDと診断した.治療のために2月に内科に再入院し,プレドニン内服を継続したところ病状は改善し,3月に退院となり,現在外来に通院中である.CDの内,口腔内病変を有する頻度は4~20%といわれる.著者らの検索した所によれば,組織を検討しえた口腔内CDの報告は10例にすぎない。
  • 杉浦 克明, 平田 りえ, 吉田 秀三, 江畑 明, 三宅 祥三
    1987 年 29 巻 3 号 p. 554-556_1
    発行日: 1987/03/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    症例,15歳女性.昭和58年春ごろより構音障害,手指振戦,歩行障害,学業成績の低下が出現.症状が進行性のため昭和59年8月入院.Kaiser-Freischer RING(+),構音障害,嚥下困難,ジストニー様歩行,手指振戦を認めた.肝機能検査は異常なし.血中銅44μg/dl,血中セルロプラスミン3mg/dl.以上より,ウィルソン病と診断し第1回腹腔鏡肝生検施行した.表面は低い結節状隆起で,褐色と青灰色の隆起がモザイク状に混在していた.肝組織内銅含有量は,1,120.7μg/gと高値であった.D-ペニシラミンを100mg-1, 200mg/day投与し,7カ月間の治療の後,第2回目の腹腔鏡検査をした.結節状隆起には変化がないが,表面の色が青灰色調の結節は減少した.含有銅も210.6μg/gと減少した.しかし,組織の改善は認められなかった.
  • 井上 正則, 島 仁, 石田 秀明, 荒川 弘道, 正宗 研, 上坂 佳敬, 堺 順一
    1987 年 29 巻 3 号 p. 559-565_1
    発行日: 1987/03/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    症例は54歳男性,上腹部痛を主訴とし,某病院で腹部腫瘤を指摘され精査目的で当科入院.低緊張性十二指腸造影で十二指腸水平脚に辺縁不整の巨大な潰瘍を有する粘膜下腫瘍を認め,小腸内視鏡検査で得られた生検組織所見で十二指腸の平滑筋由来の腫瘍と診断した.手術所見で腫瘍は7×7×5.5cmの表面平滑な腫瘤で,被膜を有し,中心部(5.5×5×4cm)は壊死に陥り,その部と十二指腸との間に瘻孔が認められた.なお,他臓器への転移は認めず,腹水もなかった.なお組織学的には円形または類円形の核と豊富な胞体をもつ腫瘍細胞が敷石状あるいは類上皮様に配列し,また腫瘍の一部に紡錘状胞体をもつ細胞が束状に配列したものや十二指腸の筋層から移行する形のものがみられたため平滑筋芽細胞腫と診断した.なお,腫瘍細胞は核分裂像,核異型に乏しく周辺への浸潤性増殖も認められなかったため悪性度の低いものと診断した.十二指腸平滑筋芽細胞腫の報告は少なく,本邦報告例を含め報告した.
  • 大橋 信治, 浅井 俊夫, 岡村 正造, 山口 初宏, 越知 敬善, 三竹 正弘
    1987 年 29 巻 3 号 p. 566-573_1
    発行日: 1987/03/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    患者は31歳男性.腹痛と発熱,下痢,6カ月間に18kgに及ぶ体重減少を主訴に来院し1984年3月7日入院した.入院時の大腸X線検査にて大小不同の不整形潰瘍をS状結腸から盲腸までほぼ全域に多数認めた.小腸X線検査でも上部から下部小腸にまで帯状狭窄部位や周囲に結節状隆起を伴う不整形潰瘍を多数認め腸結核と診断した.なお,薄壁空洞を有する肺結核を併存し喀痰から結核菌も検出された.同年3月末より抗結核療法を開始し,約2カ月後の大腸X線検査では散在性の小バリウム斑と皺襞集中像,正常なhaustraとfine network pattemの消失を認めういわゆる瘢痕帯の所見を呈したが,約1年後にはhaustraが出現し,瘢痕帯様の所見もほぼ消失した.小腸も皺襞集中を伴う狭窄部位は認めたが著明に改善していた. 以上,本例は現在では稀な重篤な腸結核症例で,かつ5回の大・小腸X線検査によりその発病から治癒に至る過程を明らかにし得た貴重な症例と考えられる.
  • 大川 清孝, 北野 厚生, 佐久間 裕之, 荒川 哲男, 小畠 昭重, 押谷 伸英, 吉安 克仁郎, 日置 正人, 橋村 秀親, 松本 誉之 ...
    1987 年 29 巻 3 号 p. 574-578_1
    発行日: 1987/03/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    症例は51歳女性で,主訴はくり返す右下腹部痛である.X線,内視鏡検査により,盲腸に粘膜のひきつれを伴う細顆粒状小隆起を認めた.確定診断の目的で手術を行い,虫垂炎に起因した隆起と診断した.すなわち,病変は,虫垂の炎症が盲腸部で穿通し瘻孔を形成したが,完全に粘膜側まで達しない状態で筋層の断裂をおこし,その治癒過程で腸壁の強い線維化と収縮により,粘膜層が強く引きよせられ,粘膜の隆起性病変が生じたものと考えられた. 本症例は特異な内視鏡像を呈し,鑑別診断上示唆に富む症例と考えられたので報告した.
  • 鈴木 洋介, 中澤 三郎, 市川 和男
    1987 年 29 巻 3 号 p. 581-587
    発行日: 1987/03/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    最近われわれは,閉塞性黄疸の経過中に大量下血で発症した急性出血性直腸潰瘍の1例を経験した.患者は75歳の女性で,上腹部痛,黄疸の主訴にて入院した.右上腹部圧痛あるも筋性防御はなかった.便潜血陽性,好中球増多,CRP強陽性,血沈亢進,血小板減少を示し,総ビリルビン10.3mg/dlであった.内視鏡的逆行性膵胆管造影(ERCP)にて総胆管結石の診断を得,経過をみていたところ第8病日に突然大量の下血ありショックとなった.内視鏡検査で直腸全体に炎症性変化と多発の潰瘍形成を認めた.粘血便が持続し,輸血量は計1,000mlを要した.注腸X線は直腸の造影剤付着ムラのみで伸展良好であった.直腸病変は難治性に経過し,サラゾピリン投与,ステロイド剤注腸,メトロニダゾール投与を試みるも治癒は得られなかった.経皮的胆道ドレナージ(PTCD),胆道鏡下截石術施行時期に一致し直腸病変の改善を認め,第108病日に内視鏡的に直腸病変の治癒を確認した.河野ら,添野らがまとめた重症基礎疾患を有する患者に伴う急性出血性直腸潰瘍に相当する1例と思われる.
  • 池田 英雄, 松隈 則人, 松尾 義人, 鴨井 三朗, 大久保 和典, 南 徹, 大曲 和博, 日高 令一郎, 池園 洋, 佐々木 英, 豊 ...
    1987 年 29 巻 3 号 p. 588-593_1
    発行日: 1987/03/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    潰瘍性大腸炎の長期観察例で問題となるのが,癌合併である.今回,われわれは,潰瘍性大腸炎の経過中に直腸に早期癌を認めた症例を経験したので報告した. 症例は50歳女性,8年前に潰瘍性大腸炎全大腸型と診断,プレドニン,サラゾピリンにて治療.定期的に外来通院中であった.昭和59年,便周囲の血液付着に気づき来院.注腸X線検査,大腸内視鏡検査にて,直腸に隆起性病変を認め,生検により高分化型腺癌と診断した.腫瘍の大きさは,1.5×1.0cmで一部粘膜下層へ浸潤していた.腫瘍周囲には異型細胞を認めなかったため,潰瘍性大腸炎を母地として発症したかは疑問である. 潰瘍性大腸炎で認められる癌は,ほとんどが進行癌であり希な症例と思われたので報告した.
  • ―自験例を中心に―
    北谷 秀樹, 梶本 照穂
    1987 年 29 巻 3 号 p. 594-601
    発行日: 1987/03/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    昭和54年1月からの7年間に経験した新生児の内視鏡検査を振返り,手技の実際や適応について検討を加えるとともに,今後の展望についても言及した.新生児の内視鏡検査施行症例は23回(20例)で,同期間中に施行された15歳以下の小児の内視鏡検査499回の4.6%にあたる.検査の目的は1)先天奇形の診断7回,2)吐下血の診断2回,3)治療1回,4)VTR一を用いた機能検査8回,5)その他5回に大別することができた.検査施行時の日齢は13.7±6.6日,体重は3142.8±717.3gであった.新生児では,消化管のサイズが極めて小さく,壁も脆弱であるために,内視鏡検査施行にあたっては繊細な操作が必要であるが,対象疾患の特殊性を考慮に入れ,疾患の診断にとどまらず,治療や機能検査への応用を行なうことにより,新生児の内視鏡検査の意義は拡って行くものと考えられる.
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