抄録
大腸早期癌の深達度診断は,内視鏡的ポリペクトミー後,病理組織学的に決定されているのが現状である.今回,われわれは昭和大学藤が丘病院にて過去約10年間に経験した大腸早期癌37病変について,内視鏡所見から深達度診断が可能であるか否かを検討した.また,良性腺腫との比較を行うために5mm以上の無茎性腺腫35病変を対照として用いた.無茎性のsm癌は(1)非対称形(asymmetry),(2)陥凹と平坦化(depression or flat surface),(3)砂粒状凹凸(sandy or rugged surface),(4)病変の堅さ(solid impression)の所見を重複して示すものが多く良性腺腫やm癌と鑑別することが可能であった.無茎性のsm癌が以上のように特徴的所見を示すのは,病変の中で癌組織の占める割合が多く,表面に露出した癌の部分を内視鏡的に観察しやすいためと考えられた.有茎性のsm癌では無茎性のものに比べて腺腫成分が多いため良性腺腫との鑑別が困難で,深達度診断は不可能であった.