抄録
内視鏡的ポリペクトミーで得られた早期大腸癌103病変を,腺腫合併の有無,腺腫の異型度,腺腫と癌との比率より分類し,臨床病理学的に比較・検討した.腺腫を合併しない病変は19病変(18.4%)のみであったが,sm癌が12病変を占め,全sm癌の過半数を占めた.中等度異型腺腫を合併する病変は55病変(53.4%)で全病変の過半数を占めたが,このうち癌の比率の高いものは19病変のみであった.軽度異型腺腫を合併する病変は29病変(28.2%)であったが,癌の比率の高いものが12病変あり,このタイプは他のすべてのタイプより有意に小さかった.以上の結果より,軽度異型腺腫を伴う病変の中にはより小さなうちに癌に置換されていくものが存在し,小さな病変が発見されにくいことを考慮すると,進行癌の母地として無視できないものと推定された.臨床的には,たとえ微小な病変であっても放置されるべきではなく,発見され次第切除すべきであると考えられた.