日本消化器内視鏡学会雑誌
Online ISSN : 1884-5738
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発症から20年後に早期直腸癌の合併をみた潰瘍性大腸炎の1例
―本邦報告例の集計を含めて―
野村 昌史奥山 修兒柴田 好辻 和之黒川 洋男澤 伸一小原 剛高井 幸裕原田 一道岡村 毅與志並木 正義柿坂 明俊江端 英隆水戸 廸郎藤田 昌宏
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1988 年 30 巻 12 号 p. 3146-3156_1

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抄録
潰瘍性大腸炎の発症から20年を経て早期直腸癌を合併した1例を経験したので報告する.症例は40歳男性,20歳のとき粘血下痢便と下腹部痛で発症し,潰瘍性大腸炎と診断された.当初は再燃・緩解を繰り返していたが,1978年からは慢性持続性となり,直腸炎型から全大腸炎型へと進展した.1987年5月に注腸X線検査および大腸内視鏡検査を施行したところ,直腸後壁に直径5.0cm大の2つの隆起性病変とその周囲に多数の扁平隆起が発見された.全大腸切除術後の病理組織学的検索では,隆起性病変は4つの腫瘍からなり,うち2つは中分化腺癌で深達度sm,残りは腺管絨毛腺腫と腺腫内癌であった.扁平隆起はdysplasiaであり,直腸からS状結腸にかけて全く平坦な粘膜内にもdysplasiaがみられた. 本症例は約2年間大腸内視鏡検査および注腸X線検査が施行されておらず,潰瘍性大腸炎の長期経過例における定期的surveillanceの必要性を感じた教訓的症例である.
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© 社団法人日本消化器内視鏡学会
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