日本消化器内視鏡学会雑誌
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胃病変が診断の契機となった成人T細胞性白血病の1例
阿部 高明斎藤 行世佐藤 寛遠藤 高関根 仁
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1988 年 30 巻 8 号 p. 1807-1812_1

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抄録
 症例は60歳男性.昭和58年7月より全身倦怠,るい痩著明となり当院内科受診し胃X線検査にてBorrmann 4型胃癌疑いにて入院となった.内視鏡にて十二指腸から胃体中部まで敷石状隆起があり生検組織診ではgroup IであったがBorrmann 4型胃癌と診断してUFTM療法を行ったが効果なかった.再度施行した内視鏡では体部から幽門部にかけて全周性に巨大皺襞を認め生検で悪性リンパ腫が疑われた.腫瘍細胞はOKT3(+),OKT4(+)のTh/i細胞であり,一方ATLA抗体,provirusとも陰性であった.しかし末血像と臨床症状から,下山らの提唱するgenome negative ATL(リンパ腫型)の最終診断を得てVEPA療法を開始したが最終的には部分寛解にとどまった.治療後の内視鏡では隆起の消失が若干認められた.直腸にも病変が確認された.ATLの内視鏡報告は少ないが頻度的には潰瘍化を伴う胃病変が最も多く次いで敷石状隆起を示すものが多い.以上のようにATLの消化管病変は稀ではないことがうかがわれた.本例はprovirusが陰性であり貴重な症例と考えられた.
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© 社団法人日本消化器内視鏡学会
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