抄録
reactive lymphoreticular hyperplasia(RLH)との鑑別が困難で3年4カ月経過観察された胃原発性表層拡大型悪性リンパ腫の1手術例を経験したので報告する.症例は55歳の女性,初回内視鏡検査で胃角部の潰瘍性病変と前庭部の多発びらんを認め,抗潰瘍剤による治療がなされたが病変は再燃,寛解を繰り返した.生検診で悪性所見は得られず単核球の浸潤が認められRLHが疑われた.保存的治療が行われたが,3年4カ月後の内視鏡検査で不規則なびらんを伴う粗大顆粒状の粘膜像が腺境界を越え胃底腺領域にまで拡大したため表層拡大型悪性リンパ腫を疑い手術を施行した.組織学的には粘膜下層までに限局した悪性リンパ腫(follicular, predominantly small cleaved cell)で,表面マーカーはB細胞型であった.胃RLHは表層拡大型悪性リンパ腫と鑑別が困難なことが多く本例はもっと早期に手術すべきであったと考えられる.