1988 年 30 巻 8 号 p. 1836-1840
著者らはERCP直後に施行したCTにより輪状膵管と膵実質との関係を明らかにできた成人輪状膵の1例を報告した.症例は66歳,女性,2年前から時々心窩部の鈍痛,4か月前からは心窩部のモヤモヤ感が出現,秋田県成人病医療センターに入院した.初回のERCPで主乳頭から十二指腸下行脚を取りかこむ輪状膵管が造影され,その直後施行した膵の単純CTで,十二指腸下行脚を背側から回りこむ造影剤の入った輪状膵管と厚さ1.2cmの膵実質を同定することができた.初回ERCPから5日後に施行したERCPで,主乳頭からの輪状膵管の造影に加えて,先細りカニューレによる副乳頭からの背側膵管造影によって,両者間に交通がないことを確認した.ERCPのみで輪状膵の診断は可能であったが,膵実質に関する情報は不明であり,輪状膵管と膵実質との関係を明らかにするためにはERCP直後に施行したCTが極めて有用と思われた.