抄録
欧米ではCrohn病の家族発生率は10%前後と報告されているが,本邦では10家系の報告があるのみである.今回,われわれは食道・十二指腸にも病変を認め,家族同胞に発生した例を経験したので報告する. 弟は18歳,1983年6月頃より胃が重苦しく食欲がなくなり,8月頃より微熱があった.10月頃より食後腹痛・下痢が出現し,6カ月で体重が12kg減少した.11月当院入院し,大腸・小腸X線,大腸内視鏡検査にてcobblestone像,縦走潰瘍を認めた.さらに,内視鏡検査にて食道に小隆起および粘膜内瘻孔,十二指腸球部にcobblestone様病変を認めた.肛門管よりの生検では,粘膜および粘膜下組織に肉芽腫様炎症性細胞の浸潤を認めた. 兄は23歳,1981年3月頃より微熱・下痢傾向あり,小腸X線検査にて回腸に縦走潰瘍およびcobblestone appearanceを認めた. HLAの検索では弟にA2,A9,BW46,BW54,兄にA9,BW54,B12,C1が認められた.