日本消化器内視鏡学会雑誌
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特異な大腸内視鏡像を呈した日本住血吸虫症の1例
井上 健一郎伊津野 稔千住 雅博船津 史郎久保 啓吾水田 陽平村田 育夫今西 建夫牧山 和也原 耕平
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1988 年 30 巻 8 号 p. 1847-1850_1

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抄録

 慢性期の日本住血吸虫症において,特異な大腸内視鏡像を呈した1例を報告した.症例は,69歳男性で,血尿を主訴として来院し,腹部超音波検査にて,偶々,肝に異常を認めたため,入院し精密検査を行った.腹腔鏡下肝生検により肝組織中に日本住血吸虫卵を検出した.注腸X線検査では,S状結腸の短縮とハウストラの減少を認めた.大腸内視鏡検査では,ほぼ全大腸にわたり,粘膜は萎縮性で,血管透見も不明瞭であり,不整形の小黄色斑を認めた.これらの異常は,S状結腸に顕著であった.黄色斑部から得られた生検組織中にも多数の日本住血吸虫卵を認めた.黄色斑は,慢性期の日本住血吸虫症にみられる最も特徴的な所見であるとする報告はこれまでにもみられたが,われわれは拡大観察により,この黄色斑が直径およそ50~100μmの顆粒の集合であり,その大きさから考えて,虫卵そのものを反映しているのではないかと推測した.

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© 社団法人日本消化器内視鏡学会
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