日本消化器内視鏡学会雑誌
Online ISSN : 1884-5738
Print ISSN : 0387-1207
ISSN-L : 0387-1207
急性潰瘍にて発症した胃梅毒の1例
前田 光雄中野 修宮本 和明柱本 満松田 康平三浦 正樹鈴木 和文岡田 究鎮西 忠信山城 主計
著者情報
ジャーナル フリー

1988 年 30 巻 9 号 p. 1981-1987

詳細
抄録

46歳,男性の胃梅毒の1例を報告する.大量飲酒後,心窩部痛と吐血を主訴に来院.初回内視鏡検査にて出血,浮腫を伴った急性多発性胃潰瘍を認めH2一プロッカーを中心に加療を行った.抗潰瘍療法を続けるも治癒傾向はなく,胃体下部より胃角部にかけて浅い不整形の多発潰瘍と幽門前庭部に粗大顆粒状病変を認めた.癌や悪性リンパ腫を疑い生検を繰り返したが陰性であり,血清梅毒反応にてガラス板法128倍,TPHA1,280倍,FTA-ABS(2+)と強陽性を呈したことから胃梅毒を疑い,ペニシリンGによる駆梅療法を施行した.駆梅療法開始2週後より治癒傾向を認め,9週後には治癒した.胃梅毒は稀な疾患であり癌や悪性リンパ腫,RLH等との鑑別が困難なことがあり,生検にても特異的所見を呈さない.抗潰瘍療法に抵抗性を示し,血清梅毒反応が陽性を呈する時には本疾患を考慮に入れ,駆梅療法を施行すれば完治しえると考えられた.

著者関連情報
© 社団法人日本消化器内視鏡学会
前の記事 次の記事
feedback
Top