抄録
胃生検標本の取り違えを未然に察知し,誤った手術を未然に防止できた2例を経験した.症例1は内視鏡検査にてverrucous gastritisと考えられた病変より生検したところGroup-Vと診断されたが,繰り返し再検しても癌組織を証明できなかった.生検標本の取り違えの可能性を疑い,そのパラフィンブロックより連続切片を作製し,抗血液型モノクローナル抗体を用いて組織中(粘膜上皮細胞,血管内皮細胞,組織内赤血球)のABH型抗原物質を同定することによって取り違えを証明し得た.症例2も同様の手段により生検標本の取り違えを証明した.内視鏡診断と生検診断が著しく異なる場合にはいろいろな間違いの可能性を考慮しなければならないが,生検標本の取り違えが疑われるような場合には免疫組織染色による血液型物質の同定が有力な手段となることを報告した.