抄録
難治性の孤立性胃静脈瘤出血に対して,α-cyanoacrylate monomer(CA)による硬化療法(ST)を施行し,止血し得た3例を経験した.3例中1例は食道にも静脈瘤があったが胃静脈瘤(Lg)との交通はなく食道側からのEOの逆流による治療は不可能であった.3例中2例は以前にSTを施行し食道静脈瘤は完全消失していた.共にLgが残存した状態で観察されていたが,6カ月後と52カ月後にそれぞれ大量のLg出血を来した.2例とも,Lgの直接穿刺によるEO注入を何度か試みたが効果がなかった.術前のイオパミドールによる静脈瘤造影では,3例とも造影濃度が薄いことから,血管が太いだけでなく,血流が速いことが考えられた.CAによるSTで,3例とも瞬時に止血できた.CAは異物として残存するためその適応を慎重に選ぶべきである.すなわち,孤立性Lgからの急性出血で,手術不能または拒否例であり,かつEO無効例が適応と考えられる.